Pythonでデータ分析や機械学習、統計処理を行う上で、必須とも言えるのが「NumPy」と「Pandas」という2つのライブラリです。
どちらもデータを効率よく扱うために設計されていますが、目的や得意分野が異なるため、使い分けを理解することが極めて重要です。
この記事では、両者の機能・構造・性能・使いどころの違いを詳しく解説し、どんな場面でどちらを使うべきかを明確にします。
NumPyとPandasの基本的な違い
| ライブラリ | 主な用途 | 得意な処理 | 扱うデータ |
|---|---|---|---|
| NumPy | 数値計算 | 多次元配列操作、線形代数 | 数値データ(行列、ベクトルなど) |
| Pandas | データ処理・分析 | 表形式データの整形、集計、可視化前処理 | CSVやExcelなどの表形式データ |
NumPyは高速な配列演算・ベクトル演算に強みがあり、科学技術計算の基盤として広く使われます。
一方、Pandasはラベル付きデータを効率よく扱う高水準のデータ分析ライブラリであり、実データの整形や前処理に特化しています。
データ構造の違い
| ライブラリ | 主なデータ型 | 特徴 |
|---|---|---|
| NumPy | ndarray | N次元配列。インデックスは整数。高速で軽量。 |
| Pandas | Series, DataFrame | 1次元または2次元のラベル付きデータ構造。可読性と操作性に優れる。 |
NumPyの例(2次元配列)
import numpy as np
arr = np.array([[1, 2], [3, 4]])
print(arr[0, 1]) # → 2
Pandasの例(DataFrame)
import pandas as pd
df = pd.DataFrame({
'A': [1, 2],
'B': [3, 4]
})
print(df.loc[0, 'B']) # → 3
Pandasは行名・列名(インデックス・カラム)を付与できるため、可読性が非常に高く、実務での扱いやすさが際立ちます。
主な機能の違い
| 機能 | NumPy | Pandas |
|---|---|---|
| 多次元配列の操作 | 高速 | 一部可能(内部的にNumPy利用) |
| 行列計算・線形代数 | 専門的に対応 | 一部可能だが非推奨 |
| 欠損値処理 | 手動で対応(np.nan) | isna(), fillna()など豊富 |
| データの読み書き(CSV, Excel) | 不便 | read_csv(), to_excel()など豊富 |
| ラベルベースのアクセス | 原則不可(インデックスのみ) | loc, iloc, atなど |
| グループ化と集計 | 非対応 | groupby(), agg() など強力 |
| 可視化との連携 | △(直接は弱い) | plot(), hist()など簡単連携 |
※ NumPyでもnp.isnan()やnp.nanmean()などを用いた欠損値処理は可能ですが、明示的に対処が必要で煩雑です。Pandasはこうした処理を自動で処理できる点が大きな利点です。
パフォーマンスとスケーラビリティ
NumPyの強み
- ベクトル演算が非常に高速(C言語ベースで実装)
- 線形代数や統計計算において高性能
- 軽量でメモリ効率が良い
Pandasの強みと制約
- 表形式データの操作は抜群に便利
- ただし、数百万行以上のデータでは速度やメモリ効率に注意が必要
- DaskやPolars、PyArrowなどと連携することでスケーラビリティを向上可能
使い分けの指針
| 使用シーン | 推奨ライブラリ | 理由 |
|---|---|---|
| 高速な数値演算や行列処理 | NumPy | 配列演算に最適化されているため |
| 表形式データの読み書きと前処理 | Pandas | CSV/Excel/SQL対応が簡便で、構造化データに強い |
| 欠損値の補完やフィルタ処理 | Pandas | NaN処理が簡単で安全性が高い |
| データの集計やグループ分析 | Pandas | groupby()での柔軟な集計が可能 |
| 機械学習の前処理 | 両方 | 数値変換はNumPy、特徴量エンジニアリングはPandasが便利 |
PandasはNumPyに依存している
Pandasの内部構造はNumPyのndarrayをベースにしています。
たとえば、以下のようにDataFrameの中身はNumPy配列として取り出すことも可能です。
df = pd.DataFrame({'A': [1, 2], 'B': [3, 4]})
print(type(df.values)) # <class 'numpy.ndarray'>
高次元データへの対応について
Pandasは1次元(Series)および2次元(DataFrame)には非常に強いですが、3次元以上のデータ構造には弱いです。
かつてはPanelという3D構造が存在しましたが、現在は非推奨です。
→ 高次元データには xarray などのライブラリを使うのが主流となっています。
まとめ:NumPyとPandasの違い一覧
| 比較項目 | NumPy | Pandas |
|---|---|---|
| 主な用途 | 数値計算・科学技術計算 | 表形式データの分析・整形 |
| データ構造 | ndarray(多次元) | Series(1D)、DataFrame(2D) |
| 欠損値処理 | △(一部対応) | ◎(豊富で直感的) |
| ラベルアクセス | ×(原則なし) | ◎(loc, iloc, atなど) |
| 行列演算 | ◎(高速で正確) | △(基本的な演算のみ) |
| ファイルI/O | × | ◎(CSV, Excel, SQLなど) |
| スケーラビリティ | 高 | 中(大規模データでは工夫が必要) |
| 対象ユーザー | 数値解析者・エンジニア | データアナリスト・ビジネスユーザー |
まとめ
NumPyとPandasは、Pythonでデータを扱う上で車の両輪のような存在です。
- NumPyは「計算」に特化したエンジンであり、
- Pandasは「実務のデータ整形・分析」に強い道具箱です。
両者の役割を理解し、場面に応じて使い分けることで、Pythonを用いたデータ処理のスピードと精度が飛躍的に向上します。
以上、PythonのNumpyとPandasの違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
