LLMとは「Large Language Model」の略で、日本語では「大規模言語モデル」と呼ばれます。
大量のテキストデータなどを使って学習し、文章の生成や要約、翻訳、質問への回答など、さまざまな自然言語処理を行うことができるAIモデルです。
ChatGPTをはじめとする多くの生成AIサービスでは、LLMが重要な技術として活用されています。
LLMは単純に文章をデータベースから検索して表示しているわけではありません。
学習によって獲得した言語のパターンや、トークン同士の確率的な関係をもとに、その場で文章を生成します。
簡単に表現すると、LLMとは「大量の文章を学習し、入力された文脈に応じて適切な言葉や文章を生成できる大規模なAIモデル」といえるでしょう。
LLMの「Large Language Model」が意味するもの
LLMという言葉は「Large」「Language」「Model」という3つの単語から構成されています。
それぞれの意味を理解すると、LLMの特徴がより分かりやすくなります。
Largeとは
「Large」は「大規模」を意味します。
LLMでは、大量の学習データや多数のパラメータを利用してモデルを構築します。
パラメータとは、AIが学習によって調整するモデル内部の数値です。
非常に多くのパラメータが相互に作用することで、文章の構造や言葉の使われ方、文脈などのパターンを学習します。
ただし、パラメータ数が多ければ必ず性能が高くなるわけではありません。
モデルの性能には、学習データの量や品質、モデルの構造、学習方法、推論方法など、さまざまな要素が影響します。
Languageとは
「Language」は「言語」を意味します。
LLMは、人間が使用する自然言語を主な対象とするモデルです。
日本語や英語をはじめとするさまざまな言語について、単語の使われ方、文章構造、文脈などを学習します。
近年では、文章だけでなく画像や音声なども扱えるマルチモーダルAIも広く利用されています。
こうしたシステムでは、LLMを中核として、画像や音声を処理する仕組みと組み合わせる場合があります。
Modelとは
「Model」は、AIや機械学習の分野における「学習済みモデル」を意味します。
学習データから一定のパターンや関係性を学び、入力された情報に応じて予測や出力を行う仕組みです。
LLMの場合は、入力された文章や文脈をもとに、適切な言葉や文章を生成する役割を持ちます。
LLMの仕組み
LLMでは、入力された文章を一定の単位に分割し、その関係性を計算しながら文章を処理します。
生成型のLLMでは、文脈に基づいて次に続くトークンを予測し、その処理を繰り返すことで文章を生成する方式が広く採用されています。
文章をトークンに分割する
LLMは、入力された文章をそのまま一つのまとまりとして処理するわけではありません。
文章を「トークン」と呼ばれる単位に分割して処理します。
トークンは、単語そのものになる場合もあれば、単語の一部分、文字、記号などになる場合もあります。
日本語の場合も、文章が複数のトークンに分割され、それぞれが数値的な情報として処理されます。
文脈から次のトークンを予測する
生成型のLLMでは、それまでに入力されたトークンを参考にしながら、次に続く可能性の高いトークンを予測します。
たとえば、
「日本の首都は」
という文章が入力された場合、それまでに学習した言語パターンなどをもとに「東京」というトークンが続く確率が高いと判断できます。
この予測を繰り返すことで、文章が生成されます。
ただし、すべてのLLMがまったく同じ方法で学習・動作するわけではありません。
モデルによっては、文章の一部を隠し、その部分を予測する方式なども利用されます。
Transformerとは
現在の主要なLLMの多くでは、「Transformer」と呼ばれるニューラルネットワークのアーキテクチャ、またはその発展形が利用されています。
Transformerは、文章中の複数の要素の関係を効率的に処理できることが特徴です。
Self-Attentionで文脈を処理する
Transformerで重要な仕組みの一つが「Self-Attention(自己注意機構)」です。
Self-Attentionでは、文章中にある各トークンが、ほかのトークンとどの程度関係しているかを計算します。
これにより、近くにある単語だけでなく、離れた位置にある単語や表現の関係も考慮しながら文脈を処理できます。
ただし、「LLM=Transformer」という意味ではありません。
LLMは大規模言語モデルという広い概念であり、その実現方法としてTransformer系のアーキテクチャが現在広く利用されていると理解するとよいでしょう。
LLMはどのように学習するのか
LLMの構築では、大量のデータを使って学習を行います。
一般的には、まず事前学習を行い、その後、用途に応じて追加の調整を行います。
事前学習
事前学習では、大量の文章データなどを使い、言語の一般的なパターンを学習します。
たとえば、次に続くトークンを予測したり、隠されたトークンを予測したりする学習が行われます。
こうした学習を大規模に繰り返すことで、文法、文章構造、単語同士の関係、さまざまな知識のパターンなどを獲得します。
ファインチューニング
事前学習済みのモデルに対して、特定の目的に合わせて追加学習を行う方法を「ファインチューニング」と呼びます。
ファインチューニングによって、特定のタスクや出力形式、文章スタイルなどにモデルを適応させることができます。
たとえば、カスタマーサポート向けの応答や、特定分野に適した出力を行うモデルへ調整することが可能です。
人間の評価を利用した調整
LLMによっては、人間の評価データを使って回答品質や安全性を改善する調整も行われます。
代表的な方法の一つが「RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)」です。
ただし、現在ではさまざまな調整方法が利用されており、すべてのLLMがRLHFを採用しているわけではありません。
LLMと生成AIの違い
LLMと生成AIは混同されることがありますが、同じ意味ではありません。
LLMは主に言語を扱うモデル
LLMは、主に文章や言語を扱う大規模なAIモデルです。
文章生成、要約、翻訳、質問応答などを得意とします。
生成AIはより広い概念
生成AIとは、新しいコンテンツを生成するAIの総称です。
生成する対象には、文章だけでなく画像、音声、動画、プログラムコードなども含まれます。
そのため、LLMは「生成AIに利用される代表的な技術の一つ」と考えると分かりやすいでしょう。
LLMと自然言語処理の違い
LLMと関係の深い用語に「自然言語処理」があります。
自然言語処理は「Natural Language Processing」の略で、NLPと呼ばれます。
自然言語処理は技術分野全体を指す
自然言語処理とは、コンピューターを使って人間の言語を処理する技術分野全体を指します。
たとえば、以下のような処理が含まれます。
- 機械翻訳
- 文章分類
- 感情分析
- 要約
- 情報抽出
- 検索
- 質問応答
LLMは、これらの自然言語処理を実現するために利用される技術の一つです。
LLMと従来型のAIとの違い
LLMが普及する以前にも、文章を処理するAIや自然言語処理技術は存在していました。
従来は、特定の目的ごとに専用のモデルやルールを構築するケースが多く見られました。
一つのモデルで幅広いタスクに対応できる
LLMの大きな特徴の一つは、一つのモデルで幅広い言語タスクに対応できる点です。
たとえば、同じモデルに対して、
「この文章を要約してください」
「英語に翻訳してください」
「ビジネスメールに書き換えてください」
「Pythonのコードを書いてください」
といった異なる指示を与えることができます。
一つの大規模なモデルを、自然言語による指示によってさまざまな用途に活用できることが、LLMの重要な特徴です。
LLMでできること
LLMにはさまざまな活用方法があります。
文章生成
テーマや条件を指定すると、それに沿った文章を生成できます。
ブログ記事、広告文、商品説明、メール、SNS投稿、企画書など、幅広い文章作成に利用できます。
文章の要約
長い文章から重要なポイントを抽出し、短くまとめることができます。
議事録、レポート、論文、ニュース、社内文書などの内容を効率的に把握する用途に利用できます。
翻訳
日本語から英語、英語から日本語など、複数言語間の翻訳にも利用できます。
文章の文脈やトーンを考慮しながら翻訳できることもLLMの特徴です。
質問応答
ユーザーが自然な文章で質問すると、それに応じた回答を生成できます。
チャットボットや問い合わせ対応システムなどで活用されています。
情報整理
大量の文章を分類したり、重要な情報を抽出したりできます。
口コミ、アンケート、問い合わせ内容などを分析する用途にも利用できます。
プログラミング支援
LLMはプログラムコードも扱うことができます。
コードの生成、説明、修正、デバッグ支援、テストコード作成など、ソフトウェア開発のさまざまな場面で利用されています。
LLMの特徴
LLMには、従来のAIと比べていくつか特徴があります。
自然な文章を生成しやすい
大量の文章データから言語パターンを学習しているため、比較的自然な文章を生成できます。
文章の長さや口調、形式などを指示して出力を調整することも可能です。
文脈を考慮できる
LLMは、単語単体だけを見るのではなく、入力された文章全体の文脈を考慮して処理します。
そのため、同じ言葉でも前後の文章によって異なる意味として扱える場合があります。
プロンプトによって動作を変えられる
LLMへの指示文は「プロンプト」と呼ばれます。
プロンプトの内容を変更することで、文章生成、翻訳、要約、分析など、さまざまな処理を行わせることができます。
LLMの活用方法
LLMは個人利用だけでなく、企業の業務でも幅広く活用されています。
カスタマーサポート
顧客からの問い合わせ内容を整理したり、回答案を生成したりする用途に利用できます。
FAQや社内データベースと組み合わせることで、問い合わせ対応を効率化することも可能です。
マーケティング
LLMはマーケティング業務とも相性が良い技術です。
広告文、SEO記事、商品説明、メールマガジン、SNS投稿などの文章作成を支援できます。
また、口コミやアンケートを整理し、ユーザーのニーズや傾向を把握する用途にも利用できます。
社内業務
議事録の要約、社内文書の作成、資料作成、メール作成などに利用できます。
社内文書の検索システムと組み合わせることで、社員が質問すると必要な情報を探して回答する仕組みを構築することもできます。
ソフトウェア開発
プログラムコードの生成や修正、コードレビュー、仕様書作成、テストコード生成などにも利用できます。
LLMのメリット
LLMを利用することで、さまざまな業務を効率化できます。
作業時間を短縮できる
文章のたたき台作成、要約、情報整理などをLLMに任せることで、作業時間を短縮できる可能性があります。
特に、定型的な文章作成や大量の情報整理と相性があります。
自然言語で指示できる
LLMでは、専門的なプログラミング言語を使用しなくても、自然な文章で指示できる場合があります。
そのため、専門知識が少ない人でも比較的利用しやすい点がメリットです。
幅広い業務に利用できる
文章生成だけでなく、翻訳、要約、分類、分析、プログラミングなど、幅広い用途に利用できます。
一つのモデルを複数の業務に活用できることもLLMの特徴です。
LLMを利用するときの注意点
LLMは便利な技術ですが、必ず正しい情報を出力するわけではありません。
利用するときには、いくつか注意すべき点があります。
ハルシネーションが発生することがある
LLMは、事実と異なる内容をもっともらしく生成する場合があります。
このような現象は一般的に「ハルシネーション」と呼ばれます。
文章が自然に見えても、内容が正しいとは限りません。
重要な情報については、公式情報や一次情報を確認することが重要です。
最新情報を持っているとは限らない
LLMが利用できる情報は、モデルやサービスによって異なります。
モデルの学習時点以降の情報を持っていない場合もあります。
一方で、Web検索や外部データベースと連携し、最新情報を取得できるAIサービスも存在します。
そのため、最新情報が必要な場合は、そのAIサービスがどのような情報源を利用しているか確認することが重要です。
個人情報や機密情報に注意する
業務でLLMを利用する場合、個人情報や顧客情報、社内機密情報などの入力には注意が必要です。
入力データの保存方法や学習への利用有無などはサービスによって異なります。
利用規約やプライバシーポリシー、社内ルールなどを確認したうえで利用する必要があります。
出力内容を確認する必要がある
LLMは文章を生成する技術であり、出力された情報の正確性を必ず保証する仕組みではありません。
特に、法律、医療、金融など、誤りが重大な影響につながる分野では、専門家や信頼できる情報源による確認が重要です。
LLMとRAGの関係
LLMと組み合わせて利用される代表的な技術の一つがRAGです。
RAGとは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」などと呼ばれます。
RAGは外部情報を検索して回答に利用する
RAGでは、LLMだけで回答を生成するのではなく、外部の文書やデータベースから関連情報を検索し、その情報をLLMに渡して回答を生成します。
たとえば、企業の社内マニュアルを検索し、その内容をもとにLLMが回答する仕組みを構築できます。
これにより、LLMが事前学習していない企業独自の情報や更新された情報を回答に利用しやすくなります。
ただし、RAGを利用すれば誤回答が完全になくなるわけではありません。
適切な情報を検索できなかった場合や、LLMが検索結果を正しく解釈できなかった場合には、誤った回答が生成される可能性があります。
LLMとファインチューニングの違い
RAGとファインチューニングは、LLMを特定用途に適応させる方法として比較されることがあります。
RAGは外部情報を追加する方法
RAGは、回答時に外部の情報を検索し、その情報を参考にして回答を生成する方法です。
最新の社内文書や商品情報など、頻繁に更新される情報を扱う場合に適していることがあります。
ファインチューニングはモデルの振る舞いを調整する方法
ファインチューニングは、追加の学習データを使ってモデル自体を調整する方法です。
特定のタスク、出力形式、文章スタイル、応答傾向などにモデルを適応させたい場合に利用されます。
RAGとファインチューニングは競合する技術ではなく、目的に応じて組み合わせて利用することもできます。
LLMについてよくある誤解
LLMを正しく理解するためには、よくある誤解についても知っておくことが重要です。
LLMはデータベースではない
LLMは大量のデータを使って学習していますが、一般的なデータベースのように、保存されている情報をそのまま検索して回答する仕組みではありません。
学習によって調整された多数のパラメータをもとに、入力された文脈に応じて文章を生成します。
ただし、学習データの一部をモデルが記憶することもあるため、「LLMは学習データを一切記憶しない」と考えるのも正確ではありません。
LLMの回答は必ず正しいわけではない
LLMは自然な文章を生成できますが、その内容が事実として正しいとは限りません。
文章の自然さと情報の正確性は別の問題です。
重要な情報については、LLMの回答だけに依存せず、信頼できる情報源を確認する必要があります。
LLMは検索エンジンとは異なる
検索エンジンは、Web上などに存在する情報を検索し、関連するページを提示することを主な役割とします。
一方、LLMは入力された情報や文脈をもとに、新しい文章を生成するモデルです。
ただし、現在では検索エンジンとLLMを組み合わせたAI検索サービスも増えているため、実際のサービスでは両者の機能が統合されていることもあります。
LLMの定義を簡単にまとめると
LLMとは、大量のテキストデータなどを使って学習し、トークンやトークン列の確率的な関係をモデル化することで、文章生成、要約、翻訳、質問応答など、さまざまな自然言語処理を行える大規模なAIモデルです。
初心者向けに簡単に表現するなら、
「大量の文章を学習し、入力された内容や文脈に応じて適切な文章を生成できるAI」
と考えると分かりやすいでしょう。
現在では、LLM単体で利用するだけでなく、Web検索、RAG、データベース、外部ツール、画像・音声処理などと組み合わせて利用されるケースが増えています。
そのためLLMは、単なる「会話をするAI」ではありません。
文章作成、情報整理、データ分析、検索支援、プログラミング、業務効率化など、幅広いAIサービスを支える重要な基盤技術の一つとなっています。
以上、LLMの定義についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
