LLMによる動画解析について

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LLMによる動画解析とは、動画に含まれる映像・音声・字幕・時間的な変化などをAIが処理し、その内容を自然言語で理解・要約・検索・説明する技術です。

ただし、一般的なテキスト専用LLMが動画ファイルをそのまま理解しているわけではありません。

実際には、画像や音声など複数の情報形式を扱える「マルチモーダルLLM」や「Video-LLM」と呼ばれるモデルが使われます。

こうしたモデルは、動画に含まれる視覚情報や音声情報などをモデルが処理できる特徴やトークンへ変換し、それらを統合しながら動画全体の意味を理解します。

現在では、動画の要約だけでなく、動画内の特定場面の検索、質問への回答、文字起こし、商品や人物の抽出など、幅広い用途に利用されています。

目次

LLMは動画をどのように解析するのか

LLMによる動画解析では、動画を単なる連続画像として扱うのではなく、視覚・音声・テキスト・時間情報などを組み合わせて処理します。

モデルによって具体的な仕組みは異なりますが、基本的には複数種類の情報を統合して動画の意味を理解します。

映像をフレームとして処理する

動画は、多数の静止画を連続して表示することで動いて見える仕組みになっています。

たとえば30fpsの動画では、1秒間に30枚のフレームが含まれています。

しかし、すべてのフレームをAIへ入力すると処理量が非常に大きくなります。

そのため、実際の動画解析では一定間隔でフレームを抽出したり、重要なフレームだけを選択したりする方法が利用されます。

たとえばGoogleのGeminiでは、標準的な静的動画処理において、デフォルトで1秒につき1フレーム、つまり1 FPSで映像をサンプリングします。

ただし、1 FPSは動画解析AI全般に共通する仕様ではありません。

モデルによって、固定間隔のサンプリング、キーフレーム抽出、シーン単位の抽出、動的なフレーム選択など、異なる方式が採用されています。

視覚情報をトークンや特徴量へ変換する

抽出された映像は、視覚エンコーダーなどを通じてAIが処理しやすい特徴量や視覚トークンへ変換されます。

その結果、モデルは動画内の、

人物
商品
建物

動物
文字

場所
画面UI
人物の動作

などを認識できます。

たとえば料理動画であれば、「人物が包丁で野菜を切っている」「フライパンに食材を入れている」といった内容を把握できます。

ただし、現在のマルチモーダルLLMでは、従来のように画像認識モデルがすべてを文章へ変換してからLLMへ渡すとは限りません。

視覚情報を直接トークン化し、言語情報と統合して推論する仕組みも一般的になっています。

音声情報を解析する

動画には映像だけでなく、音声も重要な情報として含まれています。

動画対応のマルチモーダルLLMでは、音声ストリームも利用して内容を理解できるモデルがあります。

音声からは、

発言内容
会話
ナレーション
環境音
音楽
音声と映像の関係

などを読み取ります。

そのため、映像だけでは理解しにくい場面でも、音声情報を組み合わせることで動画の意味をより正確に把握できます。

動画内の文字情報を読み取る

動画には、テロップや字幕、看板、商品パッケージ、プレゼン資料、Web画面など、多くの文字情報が含まれています。

これらはOCRを利用して読み取る場合もありますが、現在のマルチモーダルLLMでは、モデル自身の視覚認識能力によって文字を直接読み取れるケースもあります。

そのため、正確には「OCRまたはマルチモーダルモデルの文字認識能力によって動画内テキストを読み取る」と考えるのが適切です。

時系列を理解する

動画解析では、「何が映っているか」だけではなく、「どの順番で何が起きたか」を理解することも重要です。

たとえば、

人物が部屋に入る
椅子に座る
パソコンを開く

といった一連の動作は、静止画1枚だけでは把握できません。

動画では時間の流れを理解する必要があります。

このような能力は「Temporal Understanding」と呼ばれます。

ただし、時間順序の判断や細かな経過時間の推定は、現在のマルチモーダルLLMでも難しい課題の一つです。

LLMによる動画解析でできること

LLMを利用した動画解析では、単純な映像認識だけでなく、自然言語を使った高度な処理が可能です。

動画を要約する

代表的な用途の一つが動画要約です。

たとえば1時間のセミナー動画について、

「冒頭ではサービス概要を説明している」

「中盤では料金体系を紹介している」

「後半では導入事例と質疑応答を扱っている」

といった形で内容を整理できます。

さらに、

3行でまとめる
重要ポイントだけ抽出する
初心者向けに説明する
チャプター形式に整理する

といった指示も自然言語で行えます。

動画について質問する

動画の内容を読み取ったうえで、質問に答えさせることもできます。

たとえば、

「この動画では何の商品を紹介していますか」

「出演者は何人いますか」

「料金について説明しているのは何分ごろですか」

といった質問が可能です。

このような処理は「Video Question Answering」や「Video QA」と呼ばれます。

特定の場面を検索する

LLMによる動画解析では、自然言語を使って特定の場面を検索することもできます。

たとえば、

「犬が登場する場面」

「商品価格について話している場面」

「赤い車が映っている場面」

といった条件を入力し、該当する時間帯を特定します。

この分野は、Video Moment RetrievalやTemporal Groundingなどと呼ばれます。

文字起こしを作成する

動画内の音声を文字に変換し、会話やナレーションを文章化できます。

さらに、単なる文字起こしだけでなく、

読みやすい文章へ整える
要約する
記事へ変換する
FAQを作成する

といった後処理までLLMで行えます。

動画の内容を分類する

動画の内容に応じて、自動的にカテゴリーやタグを付けることもできます。

たとえば、

商品レビュー
セミナー
教育動画
インタビュー
旅行動画

などに分類できます。

大量の動画コンテンツを管理する際に有効です。

長時間動画はどのように解析するのか

LLMによる動画解析では、動画が長くなるほど処理する情報量が増えます。

たとえば1時間の動画を1 FPSで処理した場合でも、3,600枚のフレームを扱うことになります。

すべての情報を高解像度でそのまま処理すると、大量のトークンや計算資源が必要になります。

そのため、長時間動画では処理を効率化する技術が重要です。

動画をチャンクに分割する

代表的な方法の一つがチャンク分割です。

長い動画を、

0~10分
10~20分
20~30分

のように複数の区間へ分割し、それぞれを解析します。

最後に各区間の情報を統合すれば、長時間動画でも比較的効率よく処理できます。

重要なフレームだけを選ぶ

すべてのフレームを均等に見るのではなく、シーンが変わった場所や重要度の高いフレームだけを抽出する方法もあります。

これにより、不要な情報を減らしながら動画全体を理解できます。

視覚トークンを削減する

動画解析では、映像から大量の視覚トークンが生成されます。

近年では、重要性の低い視覚トークンを削減し、必要な情報だけをLLMへ渡す研究も進んでいます。

これにより、長時間動画の処理コストを抑えながら精度を維持することが可能になります。

エージェント型動画理解を利用する

2026年には、GoogleがGeminiの一部モデルで「Agentic Video Understanding」を導入しています。

従来の方法では、動画全体からあらかじめ一定間隔でフレームを取得していました。

一方、エージェント型動画理解では、モデルが質問内容に応じて、

必要な時間帯を詳しく調べる
音声を確認する
フレーム数を増やす
解像度を調整する

といった形で動画内を動的に探索します。

Googleによると、長時間動画では静的処理と比較して最大88%少ないトークンで処理できるケースがあるとされています。

ただし、必ず88%削減できるわけではなく、動画内容や質問内容によって結果は異なります。

従来の動画解析AIとLLMの違い

動画解析自体は、LLMが登場する以前から行われてきました。

従来型の動画解析AIでは、

物体検出
人物追跡
顔認識
動作認識
異常検知

など、特定の目的に特化したモデルが多く利用されていました。

一方、LLMを組み合わせた動画解析では、自然言語によって柔軟な指示を出せる点が大きな特徴です。

たとえば、

「この動画の重要なポイントを整理してください」

「商品のメリットとデメリットをまとめてください」

「初心者が理解しにくい部分を抽出してください」

といった抽象的な指示にも対応できます。

つまり、従来の動画AIが「動画の中に何があるか」を認識することを得意としていたのに対し、LLMを利用した動画解析では「動画が何を意味しているのか」を自然言語で説明できるようになっています。

LLMによる動画解析のメリット

LLMによる動画解析には、動画情報を扱いやすい言語情報へ変換できるという大きなメリットがあります。

動画を検索可能な情報へ変換できる

大量の動画を人間がすべて視聴するには、多くの時間が必要です。

LLMによる動画解析を利用すれば、

動画

文字起こし

要約

タグ付け

チャプター化

検索

という形で情報を整理できます。

その結果、「料金について説明している動画を探す」といった自然言語検索も可能になります。

動画コンテンツの再利用がしやすい

一本の動画から複数のコンテンツを作ることもできます。

たとえば、

YouTube動画

ブログ記事

SNS投稿

メルマガ

FAQ

といった形で再利用できます。

コンテンツマーケティングとの相性が非常に高い技術です。

大量の動画を効率よく分析できる

数百本、数千本の動画がある場合でも、AIを利用すれば自動的に内容を整理できます。

競合動画分析、顧客インタビュー分析、セミナー動画分析などにも活用できます。

LLMによる動画解析の課題

LLMによる動画解析は便利ですが、動画を完全に理解できるわけではありません。

高速な動きを見落とす可能性がある

フレームを間引いて処理する場合、短時間しか映らないものを見落とす可能性があります。

たとえば1 FPSで解析している場合、0.2秒だけ表示された情報は、サンプリングするタイミングによっては取得できません。

特にスポーツ映像や高速編集された動画では注意が必要です。

時系列の理解を誤ることがある

動画では、

どちらが先に起きたか
どの程度時間が経過したか
どの人物がどの行動をしたか

といった時間関係の理解が必要です。

こうした時間的推論は、現在の動画対応LLMでも難しい課題として研究されています。

認識ミスが発生する可能性がある

動画解析で発生する誤りには複数の原因があります。

たとえば、

映像が不鮮明
フレームが不足している
音声認識を間違える
動画内文字を誤認識する
時間関係を誤って推論する
モデルが存在しない情報を生成する

といったケースがあります。

したがって、動画解析の誤りをすべて「ハルシネーション」と考えるのは適切ではありません。

視覚認識ミスや音声認識ミスなども含めて考える必要があります。

長時間動画では処理コストが増える

動画が長くなるほど、

フレーム数
音声データ
視覚トークン
入力トークン
計算量

が増加します。

そのため、長時間動画ではフレーム選択やチャンク分割などの効率化が重要になります。

LLMによる動画解析の活用例

LLMによる動画解析は、さまざまな業界で活用できます。

YouTube動画の分析

YouTube動画を解析して、

動画要約
チャプター作成
タイトル案作成
説明文作成
重要場面の抽出

などを行えます。

Webマーケティング

Webマーケティングでは、動画コンテンツを記事やSNSへ展開する用途に活用できます。

たとえば、

動画を文字起こしする
内容を要約する
SEO記事の下書きを作る
SNS投稿へ変換する
FAQを作成する

といった処理が可能です。

ただし、動画から自動生成した記事をそのまま公開すればSEO評価が高くなるわけではありません。

検索意図との一致、独自性、事実確認、ユーザーにとっての有用性などを人間が確認することが重要です。

セミナーや会議の分析

セミナーや会議動画から、

重要ポイント
決定事項
質問
課題
担当者

などを抽出できます。

長時間の動画を最初から最後まで確認する必要がなくなるため、業務効率化につながります。

顧客インタビュー分析

ユーザーインタビューや顧客インタビュー動画を分析して、

顧客ニーズ
不満
購入理由
商品への評価
よく使われる表現

などを抽出できます。

マーケティングリサーチにも活用できます。

ショート動画の候補を抽出する

長時間動画から、反応が期待できそうな短い場面を抽出し、YouTube ShortsやTikTokなどのショート動画候補として活用することもできます。

LLMによる動画解析の本質

LLMによる動画解析は、単なる画像認識ではありません。

動画に含まれる、

映像
音声
文字
時間的な変化

といった複数の情報を組み合わせ、動画全体の意味を自然言語として扱う技術です。

従来のAIが「画像の中に何があるか」を認識することを得意としていたのに対し、現在のマルチモーダルLLMでは、

「何が起きたのか」

「なぜ重要なのか」

「どの場面に必要な情報があるのか」

といった、より高度な動画理解が可能になっています。

ただし、現在でも高速な動き、細かな時間関係、長時間動画、映像の細部などには課題があります。

そのため、LLMによる動画解析は「動画を完全に理解する技術」というよりも、動画に含まれる視覚・音声・文字・時間情報を統合し、要約・検索・質問応答などに利用できる形へ変換する技術と考えると分かりやすいでしょう。

以上、LLMによる動画解析についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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