日本の生成AI利用率については、「日本は遅れている」「急速に普及している」といった評価が混在しがちです。
その最大の理由は、“利用率”という言葉の中に、異なる指標が混在していることにあります。
本稿では、国内で参照頻度の高い調査結果をもとに、①個人の利用経験、②企業の業務利用、③企業としての導入・活用という3つの軸に分けて、日本の生成AI利用の現状を整理します。
個人における生成AI利用
「利用率」ではなく「利用経験」が中心指標
内閣府資料に見る全国ベースの利用経験
内閣府が情報通信白書等を基に作成した資料によると、日本における生成AIサービスの利用経験(=使ったことがある人の割合)は次のように推移しています。
- 2023年:9.1%
- 2024年:26.7%
これは「現在も継続的に使っている人」ではなく、一度でも生成AIサービスを利用したことがあるかを問う指標です。
そのため、アクティブ利用者数を示すものではありませんが、日本全体での普及スピードを把握する基準として、最も公的性格の強いデータといえます。
民間調査における利用経験率と認知率
MM総研が実施した個人向け調査(2025年8月時点)では、次の結果が示されています。
- 生成AIの認知率:80.4%
- 利用経験者の割合:21.8%
この結果から分かるのは、「知っている人は非常に多いが、実際に使ったことがある人は2割強にとどまる」という構図です。
内閣府資料の26.7%との差は、
- 調査時期
- 対象年齢
- 設問設計
の違いによるものであり、矛盾ではありません。いずれも「利用経験」を測定している点で共通しています。
トラッキング調査に見る伸び方
NRCのデイリートラッキング調査(20〜69歳)では、生成AIサービスの利用経験率が以下のように推移しています。
- 2024年6月:15.6%
- 2025年3月:27.0%
同調査では、ChatGPT単体の利用経験率も約2割に達しており、直近1年で“試してみた層”が急増していることが確認できます。
世代別の特徴:若年層が牽引する一方で二極化
情報通信白書関連の整理では、20代の生成AI利用経験は約44.7%と、全体平均を大きく上回っています。
一方、Z世代を対象とした調査では、
- 利用経験なし:約5割
- 未利用者の中でも「今後も特に使う予定がない」層が一定数存在
といった結果も出ており、若年層内でも利用が二極化している点が特徴的です。
企業における生成AI利用
「業務で使われている割合」と「導入企業割合」は別物
企業領域では、特に数字の定義を誤解しやすいため注意が必要です。
業務で生成AIが使われている企業の割合(広義)
内閣府資料では、「業務で生成AIを利用している企業の割合」として、次の数値が示されています。
- 2023年:46.8%
- 2024年:55.2%
これは、
- 特定部門のみ
- 実験的・限定的な利用
- 個々の業務プロセスでの活用
などを含む広義の業務利用を指します。
「企業として正式導入しているかどうか」を問うものではありません。
生成AIを「活用している企業」の割合(狭義)
一方、帝国データバンクの調査では、生成AIを活用している企業は、
- 17.3%
とされています。
この数字は、
- 組織として活用している
- 業務に組み込んでいる
といった導入・活用フェーズに入った企業を指すため、内閣府資料の「業務利用率」とは性質が異なります。
46.8%/55.2% と 17.3% は、同じ尺度で比較すべき数字ではありません。
ルール整備の進展:普及の次の段階へ
IPAの調査では、業務における生成AI利用について何らかのルールを定めている企業は52.0%とされています。
ただし、この中には
- 利用を許可している企業
- 利用を原則禁止している企業
の双方が含まれます。
したがって、これは「活用が進んでいる」というより、生成AIが無視できない存在になり、統制・ガバナンスの検討段階に入ったことを示す指標と捉えるのが妥当です。
国際比較と成果創出の観点
PwCの5カ国比較調査では、日本は
- 生成AIの推進度:各国と大差なし
- 生成AIによる効果創出:相対的に低い
という傾向が示されています。
これは、日本企業が
- 試験導入
- 部分最適な利用
にとどまりやすく、業務全体への統合や価値創出に至っていないケースが多いことを示唆しています。
まとめ:日本の生成AI利用率をどう理解すべきか
最後にポイントを整理します。
- 個人利用は「利用経験ベース」で2〜3割程度
- 認知は8割超だが、継続利用層はまだ限定的
- 企業では
- 広義の業務利用:5割超
- 組織的な導入・活用:2割未満
- 普及フェーズは「導入」から「設計・統合・成果創出」へ移行中
日本の生成AI利用は決して停滞しているわけではなく、“量的拡大の初期段階を終え、質が問われるフェーズに入りつつある”と整理するのが、最も実態に即した見方といえるでしょう。
以上、日本の生成AIの利用率についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
