C++の言語規格とは、「C++という言語がどのような文法を持ち、どのように振る舞うべきか」を国際的に定義した公式ルールです。
この規格があることで、異なる環境やコンパイラであっても、同じC++コードが同じ意味を持つことが保証されます。
C++の規格は ISO(国際標準化機構) によって策定されており、正式にはISO/IEC 14882 という規格番号で管理されています。
この番号は「C++という言語仕様そのもの」を指すもので、改訂のたびに内容が更新されます。
「C++11」「C++17」などの呼び方について
一般に使われている「C++11」「C++17」「C++20」「C++23」といった名称は、規格改訂を区別するための通称です。
これらは主に策定が進んだ年やドラフトが固まった年に基づいて呼ばれており、ISO規格として正式に出版された年と必ずしも完全に一致するとは限りません。
そのため、実務や技術記事では、
- 「C++17対応」
- 「C++20を前提とする」
といった形で、どの世代の言語仕様を想定しているかを示す目的で使われるのが一般的です。
C++言語規格の進化の流れ
C++は一度完成して終わった言語ではなく、長期にわたって段階的に進化してきました。
- 初期の規格では、オブジェクト指向やテンプレートといった基礎概念が中心でした
- その後、大規模開発や安全性、保守性の要求が高まるにつれて、言語そのものの設計思想が変化していきました
特に2010年代以降は、概ね3年ごとに新しい規格を策定するという流れが定着しています。
ただし、これは厳密な保証ではなく、標準化委員会の進捗や合意状況に左右される点には注意が必要です。
C++11以降が「現代的C++」と呼ばれる理由
C++11は、それ以前のC++と比較して、言語の使い方そのものを大きく変えた転換点とされています。
この規格以降、
- 記述量を減らし、読みやすさを向上させる仕組み
- メモリ管理やリソース管理を安全に行うための考え方
- 並列処理や最適化を意識した設計
といった要素が言語仕様として強く意識されるようになりました。
そのため、C++11以降のスタイルを前提にしたC++は、しばしば 「Modern C++(モダンC++)」 と呼ばれます。
C++14とC++17の位置づけ
C++14は、C++11で導入された多くの新機能を実際に使いやすくするための改良が中心となっています。
大きな設計変更は少ないものの、細かな不便さが解消され、実務での扱いやすさが向上しました。
C++17ではさらに、
- 記述を簡潔にするための文法強化
- 標準ライブラリの拡充
- 実務で頻繁に求められていた機能の標準化
が進められました。
この結果、C++17は 機能の充実度、安定性、コンパイラ対応状況のバランスが良い規格として、多くのプロジェクトで採用されるようになりました。
C++20とC++23の特徴と注意点
C++20では、従来よりもさらに高い抽象度で設計を行える仕組みが導入され、言語としての表現力が大きく向上しました。
一方で、機能ごとにコンパイラやビルド環境の対応状況に差があり、特に新しいビルドモデルを前提とする要素については、導入コストが高くなる場合があります。
C++23は、C++20で導入された要素を補強・改善する位置づけの規格であり、言語全体をより安定させる方向での更新が中心です。
新規開発で採用されることもありますが、必ずしもすべての現場で即座に必要になる規格ではありません。
規格とコンパイラの関係
C++の言語規格は「どうあるべきか」を定義するものであり、実際にそれを動かすのはコンパイラです。
そのため、
- 規格として定義されていても、コンパイラが未対応の機能が存在する場合がある
- 規格外だが、特定のコンパイラ独自の拡張が使える場合もある
といった差異が生じます。
実務では、「どの規格を使うか」だけでなく、「どのコンパイラ・どのバージョンを使うか」まで含めて考える必要があります。
実務・学習における規格選択の考え方
一般的な目安としては、以下のように考えられることが多いです。
- 学習用途では、情報量が多く、現代的な書き方を学べる規格が適している
- 業務用途では、既存コードや開発環境との互換性が最優先される
- 新規プロジェクトでは、将来の保守性や人材確保を見据えて、比較的広く普及している規格が選ばれやすい
この観点から、C++17は「無難で採用しやすい選択肢」になりやすいという評価を受けています。
ただし、これはあくまで傾向であり、分野や組織によって最適解は変わります。
よくある誤解について
新しい規格が常に高速である、というわけではありません。
実行速度は主にアルゴリズム設計や実装の質に依存し、規格そのものが直接性能を決定するわけではありません。
一方で、新しい規格では「安全で最適化しやすい書き方」をしやすくなるため、結果として性能改善につながる設計が可能になるケースはあります。
まとめ
- C++の言語規格は、C++の文法と振る舞いを定義する国際標準である
- 「C++11」「C++17」などは通称であり、ISOの正式出版年とは必ずしも一致しない
- C++11以降は現代的な設計思想を前提としたC++として扱われる
- C++17は安定性と実務適性のバランスが良く、広く採用されやすい
- 規格選択は、用途・環境・既存資産を考慮して決めるべきである
以上、C++の言語規格についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
