AIエージェントとRAGの違いについて

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近年、生成AIの文脈で「AIエージェント」「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という言葉を目にする機会が急増しています。

しかし実務の現場では、

  • 「RAGとエージェントの違いが曖昧」
  • 「RAG=エージェントの一種?」
  • 「どちらを使えばいいのか分からない」

といった混乱も少なくありません。

結論から言うと、AIエージェントとRAGは競合概念ではなく、役割がまったく異なる技術です。

むしろ、正しく理解すると “組み合わせて使う”ことで最大の効果を発揮します。

目次

AIエージェントとは何か

定義(正確版)

AIエージェントとは、目標を与えられると、その達成に向けて自律的に計画・判断・行動を繰り返すAIシステムです。

単なる質問応答AIではなく、「次に何をすべきか」を自分で決め、外部ツールを使い、結果を評価しながら前に進みます。

AIエージェントの基本構造

AIエージェントは、多くの場合次のループ構造を持ちます。

  1. 目標(Goal)
    • 例:
      • Webサイトの改善案を作る
      • 月次レポートを自動生成する
  2. 計画・推論(Planning / Reasoning)
    • タスクを分解
    • 実行順序を決定
  3. 行動(Action)
    • Web検索
    • API呼び出し
    • ファイル生成
    • データ更新
  4. 観測・評価(Observation / Reflection)
    • 結果は妥当か
    • 次に修正すべき点は何か
  5. 再計画(Loop)

重要なのは、人が逐一指示しなくても“目的達成まで動き続ける”点です。

AIエージェントが向いている領域

  • 業務フローの自動化
  • マーケティング施策の継続改善
  • レポーティング・分析業務
  • 複数ツールを横断する作業
  • 人間の意思決定を補助するタスク

「考えて動く」必要がある業務は、AIエージェントの得意分野です。

RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは何か

定義(正確版)

RAGとは、LLMが回答を生成する前に、外部の知識ソースから関連情報を取得し、それを根拠として文章生成を行う仕組みです。

RAGは「自律的に行動する仕組み」ではなく、生成結果の正確性・根拠性を高めるためのアーキテクチャです。

RAGが生まれた背景

LLMには以下の弱点があります。

  • 学習時点以降の情報を知らない
  • 社内限定情報を参照できない
  • それらしい誤情報(ハルシネーション)を生成する

RAGはこれを解決するために、

  • 検索(Retrieval)
  • 生成(Generation)

を組み合わせた仕組みとして設計されました。

RAGの基本フロー

  1. ユーザーの質問を受け取る
  2. 関連ドキュメントを検索
    • 社内資料
    • マニュアル
    • データベース
    • FAQ
  3. 検索結果をLLMに渡す
  4. その情報を根拠に回答を生成

AIは「与えられた情報の範囲内で答える」のがRAGの本質です。

RAGの強みと注意点

強み

  • 社内・非公開データを活用できる
  • 回答に根拠を持たせやすい
  • ハルシネーションを抑制できる

注意点

  • 正確性は「検索品質」「データ品質」に強く依存する
  • 関係ない文書を引くと誤回答になる
  • 設計次第では“それっぽい誤回答”も起こる

RAGは「自動的に正確になる魔法」ではない点が重要です。

AIエージェントとRAGの本質的な違い

役割の違い

観点AIエージェントRAG
本質行動主体知識補強の仕組み
目的目標達成正確な回答生成
判断自律的に行う行わない(設計次第)
動作多段階・ループ型単発が基本
創造性高い制約付き
正確性ガードレール次第上げやすいが設計依存

「RAGは行動しない」はどういう意味か

よくある誤解として「RAGは検索しかしない」という言い方があります。

これは 伝統的なRAG(single-shot RAG) に限れば概ね正しいですが、最近では AIエージェントがRAGを“道具として”使う構成(Agentic RAG) も一般的です。

つまり、

  • RAG単体
    検索 → 生成(1回)
  • エージェント × RAG
    必要に応じて何度も検索し、判断に活かす

RAGは「主体」ではなく、エージェントに使われる“機能”になり得るのです。

実務での正しい使い分け

RAG単体が向いているケース

  • 社内FAQ
  • マニュアル検索
  • 規約・法務文書の参照
  • 製品仕様の問い合わせ対応

正確性・一貫性が最優先の場面。

AIエージェントが向いているケース

  • 業務自動化
  • 分析・レポート作成
  • 継続的な改善タスク
  • 複数ツールを横断する作業

判断・行動・試行錯誤が必要な場面。

最も実務的に強い構成

AIエージェント × RAG

  • エージェント:
    「何をすべきか」を判断し行動
  • RAG:
    判断の根拠となる正確な情報を提供


“正しい情報を参照しながら、自律的に動くAI”
これが現在の実務における最適解です。

まとめ

  • AIエージェント
    → 目標達成のために「考えて動くAI」
  • RAG
    → 回答の正確性を高める「知識取得の仕組み」
  • 両者は対立概念ではない
  • RAGはエージェントに組み込まれることが多い
  • 実務では「組み合わせ前提」で考えるのが正しい

以上、AIエージェントとRAGの違いについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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