生成AIを使った文章生成、翻訳、CSV出力、CMS投稿などの実務において、「文字化け」は依然として頻発するトラブルの一つです。
一見すると生成AIそのものが原因のように思われがちですが、実際にはAIの生成結果と人間側の利用環境の間にある“変換工程”で問題が起きているケースが大半です。
本稿では、生成AI時代の文字化けについて、
- 技術的に正しい原因整理
- ありがちな誤解の修正
- 実務で再発させないための考え方
を中心に解説します。
生成AIの文字化けはどこで起きているのか
結論から言うと
生成AIそのものが「文字化けした文章を作っている」ケースは多くありません。
文字化けの大部分は、以下のいずれかで発生します。
- 入力時
- すでに文字化け・不可視文字を含むテキストをAIに渡している
- 出力後の処理時
- APIレスポンスの受信
- CSV化・Excelでの表示
- CMS(WordPressなど)への貼り付け
- データベース保存
つまり、問題の本質は
AIの生成結果 × 人間側の文字コード/表示環境
のミスマッチにあります。
文字化けの最大要因:文字コード不一致
文字コードとは何か(簡潔に)
コンピュータは文字をそのまま理解しているわけではなく、数値(バイト列)+文字コード表によって文字を解釈しています。
日本語環境で問題になりやすい代表例は以下です。
- UTF-8
- Shift_JIS(WindowsではCP932)
UTF-8で作られた文字列をShift_JISとして解釈するあるいはその逆を行うと、文字化けが発生します。
この構造自体は、生成AIが登場する以前から変わっていません。
「生成AIは文字コードを意識していない」は概ね正しいが補足が必要
生成AI(大規模言語モデル)は、内部的には文字列を
- トークン
- 数値ベクトル
として処理しており、「UTF-8かShift_JISか」を意識して文章を生成しているわけではありません。
ただし重要なのは、AIの内部処理と、外部に出力された文字列の扱いは別問題という点です。
- AI内部:トークン処理(文字コード非依存)
- 外部出力:テキストとしてエンコード/デコードされる
この境界部分(API・UI・保存処理)で文字化けが起きます。
生成AI特有の“誤解されやすい”文字化け要因
不可視文字・置換文字の混入
生成AIは、入力テキストに含まれる以下のような文字を「異常」とは判断しません。
- 置換文字(� / U+FFFD)
- ゼロ幅スペース
- 制御文字
- 結合文字が未正規化のまま残っているケース
これらが含まれた文章を入力すると、AIはそのまま保持・補完して出力します。
結果として、
- 表示環境によって崩れる
- CMSやExcelで文字化けして見える
という現象が起こります。
波ダッシュ(〜)と全角チルダ(~)の問題
見た目が似ている以下の文字は、内部的には別物です。
- 波ダッシュ:U+301C
- 全角チルダ:U+FF5E
Shift_JIS/CP932変換や環境差によって、
- 別の文字に化ける
- 消える
- 文字化けの原因になる
ことがあります。
生成AIはこれらを意味的には同じ文脈で扱うことがありますが、出力としては別文字を出し分けるため、後工程で問題化します。
これは「AIの誤り」ではなく、表記統一・正規化の問題です。
実務で頻発する具体的な文字化けパターン
CSV → Excel の文字化け
- UTF-8(BOMなし)のCSV
- Windows版Excelでダブルクリック
この組み合わせは、依然として高確率で文字化けします。
実務上の安全策は以下です。
- Excel利用前提なら UTF-8 with BOM
- もしくは Excelの「データ取り込み」でUTF-8指定
「BOMを付ければ絶対大丈夫」ではありませんが、事故率を最小化する運用としては有効です。
WordPress・CMSへの貼り付け
- AI出力をコピー
- ブロックエディタやクラシックエディタに貼り付け
- テーマ・プラグイン・DBの処理差
この過程で、
- タイトルだけ化ける
- メタ情報が崩れる
- SNSシェア時に異常が出る
といった事象が起きます。
原因の多くは、CMS側の文字処理や過去設定の名残です。
APIレスポンス処理時の問題
多くのAPIはUTF-8でレスポンスを返しますが、
- 受信側での decode 指定ミス
- ログ/DB保存時の文字コード不一致
- 表示UI側の解釈違い
により文字化けが発生します。
ここで重要なのは、「APIが悪い」と決めつけず、受信後の処理を切り分けることです。
実務での正しい対処方針
UTF-8に統一する(前提条件)
- 入力
- 出力
- 保存
- 表示
すべてをUTF-8前提で設計します。
HTML、API、DB、CSV、それぞれで「どこでUTF-8が崩れる可能性があるか」を明示的に管理することが重要です。
入力テキストの正規化・クリーニング
生成AIに渡す前に、
- 正規化(NFCなど)
- 不可視文字・制御文字の除去
を行うだけで、後工程の文字化けは大幅に減ります。
「AI出力をそのまま流さない」工程設計
生成AIは非常に優秀ですが、文字コードや表示環境までは保証してくれません。
そのため、
- 中間チェック
- 検知ルール(�、ã、â などの頻出パターン)
- 人間の目での最終確認
を組み込むのが、実務では現実的です。
まとめ
- 生成AI時代でも、文字化けの本質は 文字コード不一致と環境差
- AI自体が原因であるケースは少ない
- 不可視文字・正規化不足が「新しい落とし穴」
- CSV・Excel・CMSは依然として高リスク
- UTF-8統一+前後工程の設計で、ほぼ防げる
生成AIは「文章を作る力」は非常に高い一方で、それを“どこにどう流すか”は人間側の設計責任です。
以上、生成AIの文字化けについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
