C++のyieldについて

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C++について調べていると「yield」という言葉を目にすることがありますが、C++には yield という単独のキーワードは存在しません

その代わり、文脈によって意味の異なる「yield的な概念」が使われています。

これを正確に理解しないまま使うと、スレッド制御や非同期設計において誤解や設計ミスにつながるため、ここでは 仕様に即した正確な整理を行います。

目次

C++で「yield」と呼ばれる2つの概念

C++の文脈で「yield」と言われる場合、ほぼ確実に次のどちらかを指しています。

  • スレッドの実行権を一時的に譲る仕組み
  • コルーチンで値を返しつつ実行を中断する仕組み

この2つは名前こそ似ていますが、役割・動作レベル・設計思想がまったく異なる別物です。

スレッドにおける yield の意味

スレッドにおける yield は、

「現在実行中のスレッドが、
OSスケジューラに対して他の実行可能スレッドを優先してよいと伝える」

という意味を持ちます。

ここで重要なのは、yield は「停止」や「待機」を意味しない点です。

実行時の性質

スレッドの yield には、次のような特徴があります。

  • スレッドは終了しない
  • 明確な待ち状態(ブロック)には入らない
  • 実際に切り替えが起こるかどうかは、OSやスケジューラ次第
  • 他に実行可能なスレッドがなければ、同じスレッドがすぐ再開されることもある

つまり yield は、

「実行権を必ず手放す命令」ではなく、
「実行権を譲ってもよいという意思表示」

に過ぎません。

sleep との本質的な違い

yield は、しばしば sleep と混同されますが、両者は目的も保証内容も異なります。

  • sleep は、指定された時間だけ確実に実行を停止する
  • yield は、停止時間や停止そのものを保証しない

yield は時間待ちの代替ではなく、スケジューラとの協調のための低レベル操作です。

実務上の注意点

スレッドの yield は以下の理由から、実務で多用すべき機能ではありません。

  • 効果が OS・環境・負荷状況に強く依存する
  • 性能特性を予測しにくい
  • 条件待ちや同期の用途として不適切

実務では、条件変化を待つ仕組みや排他制御を適切に使う方が、可読性・安全性・性能のいずれも優れます。

C++20 における co_yield(コルーチン)

C++20 では、言語機能として コルーチン が導入されました。

この文脈で登場するのが co_yield です。

コルーチンとは何か

コルーチンとは、

関数の実行を途中で中断し、
後で同じ位置から再開できる仕組み

を指します。

通常の関数では、戻ると状態はすべて破棄されますが、コルーチンではローカル変数や実行位置が保持されます。

co_yield の役割

co_yield は、

  • 値を外部に渡す
  • 関数の実行状態を保持したまま中断する
  • 次に再開されたとき、直前の続きから処理を進める

という役割を持ちます。

この振る舞いは、Python や C# の yield に近く、ジェネレータやストリーム処理を自然な形で記述できるのが特徴です。

標準仕様に関する注意点

コルーチンそのものは C++20 の標準機能ですが、

  • 値を列挙するための「ジェネレータ型」は
    必ずしも標準ライブラリに用意されているわけではありません

実際の利用では、外部ライブラリや自作の型を用いるケースが一般的です。

内部動作の正確な理解

co_yield を使う関数では、通常の関数とは異なり、

  • 実行状態を保持するための コルーチンフレーム が生成される
  • ローカル変数や実行位置がこのフレームに保存される
  • フレームの確保方法や最適化の有無は、処理系や状況によって異なる

多くの実装では動的確保が行われますが、必ずヒープを使うとは限らない点が重要です。

コストに関する正しい見方

コルーチンは仕組みが複雑なため、一定の管理コストは発生します。

しかしそれは単なる欠点ではありません。

  • 手書きの状態機械
  • コールバックの多重ネスト
  • 非同期処理の分岐地獄

といった構造を置き換えることで、可読性・保守性・安全性が大きく向上するケースも多いのが実情です。

スレッドの yield と co_yield の決定的な違い

両者は名前こそ似ていますが、本質的には次のように異なります。

  • スレッドの yield
    → 実行単位はスレッド
    → OSスケジューラへの協調動作
    → 実行再開のタイミングは環境依存
  • co_yield
    → 実行単位は関数
    → 言語レベルで状態を保持
    → 中断位置から正確に再開

共通点は名称だけで、設計上の目的は完全に別物です。

実務での使い分け指針

  • スレッドの yield は、特殊な低レベル制御を除き、基本的には避ける
  • 状態を保持しながら段階的に処理を進めたい場合は、コルーチンを検討する
  • yield の名に惑わされず、「何を中断し、何を制御したいのか」で選択する

まとめ

  • C++に yield という単独キーワードは存在しない
  • 「C++のyield」と呼ばれるものは、実際には2種類ある
    • スレッドの実行権を譲る仕組み
    • コルーチンで値を返しつつ実行を中断する仕組み
  • 両者は目的も挙動も設計思想も異なる
  • 正確に理解しないと、非同期設計や性能面で誤った判断につながる

以上、C++のyieldについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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