C++でデリゲートを利用する方法について

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C# や Unity などで使われる「デリゲート」は、関数を値として扱い、処理の差し替えやイベント通知を可能にする仕組みです。

一方で、標準C++には「delegate」という名称の言語機能は存在しません

これは C++ がデリゲートを否定しているわけではなく、言語レベルで単一の仕組みに統合していないという設計上の違いによるものです。

C++では、デリゲートと同等の役割を、複数の機能や設計パターンを組み合わせることで実現します。

目次

C++で「デリゲート的な処理」を実現する基本方針

C++におけるデリゲート相当の実装は、次のような目的を満たすために用いられます。

  • 処理を呼び出し元から分離したい
  • 実装を後から差し替えたい
  • コールバックやイベント通知を行いたい
  • クラス設計を疎結合に保ちたい

これらの目的に対して、C++では用途に応じて手段を選択します。

関数ポインタという最も低レベルな選択肢

関数ポインタは、C言語時代から存在する仕組みで、関数のアドレスを保持し、後から呼び出すことができます。

この方法は以下の特徴を持ちます。

  • 仕組みが非常に単純でオーバーヘッドがない
  • C言語やOSレベルのAPIとの互換性が高い
  • 状態を持つことができない
  • オブジェクト指向との相性が良くない

そのため、現代的なC++設計では使用範囲は限定的ですが、低レイヤーやリアルタイム性が重視される場面では今でも有効です。

std::function が担う「事実上のデリゲート」

標準ライブラリに含まれる std::function は、C++において最も一般的に使われる「デリゲート相当」の仕組みです。

この仕組みは、次のような利点を持ちます。

  • 通常の関数、ラムダ式、メンバ関数などを同一の型として扱える
  • 処理の差し替えや保持が容易
  • API設計が直感的で、可読性が高い

一方で注意点もあります。

  • 型消去による間接呼び出しが発生する
  • キャプチャを含む処理では、内部で動的確保が行われる場合がある
  • 高頻度・低遅延が求められる処理ではコストが無視できないことがある

そのため std::function は、UIイベントや業務ロジック、非ホットパスのコールバック処理に最適と考えるのが現実的です。

ラムダ式は軽量で表現力の高い選択肢

ラムダ式は、処理をその場で定義し、必要な状態を自然に保持できるため、C++におけるデリゲート的処理と非常に相性が良い存在です。

主な特徴は以下の通りです。

  • 必要な変数のみを明示的に保持できる
  • 可読性が高く、意図がコード上で分かりやすい
  • コンパイラによる最適化が効きやすい

短命なコールバックや、一時的な処理の受け渡しには特に適しており、std::function と組み合わせることで、柔軟性と可読性のバランスが取れた設計が可能になります。

メンバ関数を使ったコールバック設計の注意点

オブジェクト指向的に、特定のインスタンスのメンバ関数を後から呼び出したい場面もあります。

ただし、この方法は以下の点に注意が必要です。

  • 呼び出し対象オブジェクトの寿命管理が難しい
  • 型安全性を確保しづらい実装になりがち
  • 汎用的なデリゲートとしては拡張性が低い

そのため、特別な理由がない限り、汎用的な設計には std::function を用いる方が安全です。

イベントとしてデリゲートを使う場合の考え方

複数の処理を登録し、あるタイミングでまとめて呼び出す仕組みは、いわゆるイベントシステムです。

単純に処理を集めて呼び出すだけであれば実装は容易ですが、実用的な設計では次の点を考慮する必要があります。

  • 登録した処理を後から解除できるか
  • 対象オブジェクトが破棄された後に呼ばれないか
  • 呼び出し中に登録や解除が行われた場合の挙動
  • スレッド安全性が必要かどうか

これらを考慮せずに設計すると、予期しないクラッシュや不具合の原因になります。

パフォーマンスと設計のバランス

C++では、処理速度を最大限に重視する場合、テンプレートによる静的多態が選ばれることがあります。

この方法は非常に高速ですが、「後から差し替える」「統一的に保持する」といった、デリゲート本来の性質とは方向性が異なります。

そのため、

  • 柔軟性・拡張性重視 → std::function + ラムダ
  • 速度最優先・ホットパス → テンプレート
  • 低レイヤー・互換性重視 → 関数ポインタ

という使い分けが、実務では最も安定します。

まとめ

  • 標準C++には delegate という言語機能は存在しない
  • 代替として複数の仕組みを用途別に使い分ける
  • 実質的なデリゲート役は std::function
  • ラムダ式は可読性と柔軟性を大きく高める
  • パフォーマンスが重要な場面では設計の選択が重要

C++のデリゲートは「一つの機能」ではなく、設計思想の集合体として理解することが重要です。

その理解があると、ライブラリ設計やイベントシステム構築において、無理のない、保守性の高いコードを書くことができます。

以上、C++でデリゲートを利用する方法についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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