機械学習のMLPについて

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MLP(Multi-Layer Perceptron:多層パーセプトロン)は、ニューラルネットワークの中でも最も基本的で重要な構造を持つモデルです。

現在のディープラーニングの基礎を築いた存在であり、機械学習の世界では「全結合型ニューラルネットワーク」としても知られています。

MLPは、入力されたデータを複数の層を通して処理し、最終的な予測結果を出す仕組みを持っています。

目次

MLPの基本構造

MLPは大きく「入力層」「隠れ層」「出力層」の3つで構成されています。

  • 入力層(Input Layer)
    モデルがデータを受け取る最初の部分です。
    たとえば、画像であればピクセルの値、テキストであれば数値化された単語のベクトルなどが入力されます。
  • 隠れ層(Hidden Layers)
    データの特徴を抽出する役割を持つ層です。
    この層を重ねることで、モデルはより高度で抽象的なパターンを学習できます。
    MLPが「多層」と呼ばれるのは、この隠れ層が複数存在するためです。
  • 出力層(Output Layer)
    学習の結果を出力する層です。
    分類問題ならカテゴリーごとの確率、回帰問題なら数値などが最終的に出力されます。

各層のノード(ニューロン)は次の層のすべてのノードと結合しており、これを「全結合構造」と呼びます。

この構造により、MLPは柔軟で強力な表現能力を持ちます。

MLPが学習する仕組み

MLPは、入力データを使って予測を行い、その結果と正解データの差をもとに自らを修正していきます。

この修正のプロセスを「学習」と呼び、次のようなステップで行われます。

  1. 順伝播(Forward Propagation)
    入力されたデータが層を通過しながら処理され、出力が生成されます。
  2. 誤差の計算
    出力結果と正解の差を「損失関数」によって数値化します。これが誤差です。
  3. 誤差逆伝播(Backpropagation)
    誤差を出力層から入力層に向けて逆方向に伝え、どの重みがどれだけ誤差に影響しているかを計算します。
  4. パラメータの更新
    重みやバイアスと呼ばれるパラメータを調整し、誤差が小さくなるようにモデルを改善します。
    このときに用いられる代表的なアルゴリズムが「勾配降下法」や「Adam」などです。

これらのプロセスを何度も繰り返すことで、MLPは徐々に精度を高め、データに潜むパターンを学んでいきます。

活性化関数の役割

MLPが単なる線形モデルではなく、複雑な関係を学習できるのは「活性化関数」の存在によります。

活性化関数は、層ごとの出力に非線形な変換を加えるもので、これによりモデルはより豊かな表現を学習できます。

代表的な活性化関数には以下のようなものがあります。

  • ReLU(リル)
    現在もっとも一般的に使用される関数で、学習が安定しやすく、計算も高速です。
    勾配消失問題を緩和できる点が大きな利点です。
  • Sigmoid(シグモイド)
    出力を0から1の範囲に変換します。
    二値分類の出力層などでよく利用されます。
  • Tanh(双曲線正接)
    出力を-1から1に正規化します。
    Sigmoidよりも中心が0に近いため、学習がスムーズに進みやすい特徴があります。

近年では、中間層にはReLU系の関数が多く使われ、出力層ではタスクに応じてSigmoidやSoftmaxなどが選ばれます。

MLPの長所と短所

長所

  • 構造がシンプルで理解しやすく、実装も容易
  • 理論的には、連続的な関数を任意の精度で近似できる
  • 表形式のデータなど、構造が明示的でないデータに適している

短所

  • 画像や音声など、構造を持つデータの学習が苦手
  • パラメータの数が多く、過学習を起こしやすい
  • 深いネットワークでは勾配が消失し、学習が進みにくくなることがある

このため、画像処理にはCNN(畳み込みニューラルネットワーク)、時系列データにはRNN(リカレントニューラルネットワーク)やTransformerが用いられるケースが増えています。

しかし、MLPは依然として構造が単純なデータ領域では高いパフォーマンスを発揮します。

現代におけるMLPの位置づけ

MLPは古典的なモデルでありながら、今も多くのAIモデルの中核を担っています。

たとえば、自然言語処理で使われるTransformerモデルの内部では、MLPと同様の仕組みを持つ「Feed Forward Network」が利用されています。

また、「MLP-Mixer」と呼ばれるモデルでは、画像を処理するタスクをすべてMLPのみで実現するという新しい試みも行われています。

さらに、強化学習の価値関数近似や自己符号化器(AutoEncoder)の構成要素としてもMLPは活躍しており、その応用範囲は非常に広いものとなっています。

MLPの主な応用分野

分野主な活用例
分類顧客離脱予測、医療診断、スパム検出など
回帰売上・需要・株価などの予測
特徴抽出AutoEncoderの潜在表現学習
強化学習エージェントの行動価値関数の近似
自然言語処理Transformer内部のフィードフォワード層として利用

まとめ

MLP(多層パーセプトロン)は、人工ニューラルネットワークの原点ともいえる存在です。

シンプルな構造ながら、複雑な関数を近似できる理論的な力を持ち、今日の深層学習モデルの設計思想の基礎を築いています。

現在のAIモデル、たとえばTransformerや自己符号化器などの中にもMLPの考え方が組み込まれており、まさに「古くて新しい」中心的な存在です。

以上、機械学習のMLPについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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