Macは機械学習についてしばしば「向いていない」と言われますが、その理由は主にGPU・フレームワークの相性にあります。
その一方で、Apple Siliconの登場後は性能面・環境構築のしやすさなど、多くの点で従来よりも大幅に改善しています。
結論としては、
- 大規模モデルの学習 → 不向き
- 推論・軽量な学習・開発用途 → 非常に使いやすい
- 昔のIntel Macとは別物レベルで機械学習に強くなった
という“両面性”を持つ環境です。
以下ではその理由を詳しく解説します。
Macが「機械学習に向いていない」と言われる主な理由
NVIDIA GPU(CUDA)が使えない
深層学習分野では、NVIDIA GPU + CUDA が事実上の標準技術です。
- PyTorch
- TensorFlow
- JAX
- Diffusers
- 大規模なLLM・画像モデル
これらの高速学習はCUDA前提の最適化が行われており、Apple SiliconにはNVIDIA GPUを搭載できないため、
- CUDAが使えない
- CUDA依存のコード・学習手順がそのまま動かない
という制約が生じます。
これは「Macは機械学習に不向き」と言われる最大要因です。
大規模学習ではメモリが足りない
LLMや大規模画像モデルを“フル学習”させる場合、しばしば
- GPUメモリ 48GB〜数百GB
- 分散学習
が必要になります。
Apple Siliconのユニファイドメモリがどれだけ高速で効率的でも、物理的なメモリ容量が絶対的に不足します。
Apple Silicon Mac の「強い部分」
Intel時代のMacはCPU性能も熱問題も厳しく、機械学習目的ではほとんど不向きでした。
しかし、Apple Silicon(M1〜M4)は状況を大きく変えています。
PyTorch の mps によるGPU活用が可能
PyTorchは Mac向けのMPS(Metal Performance Shaders)バックエンドをサポートしており、
device = torch.device("mps")
でGPUを利用できます。
これにより以下が可能になりました。
- CPUより大幅に速い推論
- 小~中規模の学習をGPUで実施
- Intel Mac 時代より圧倒的に快適なML環境
ただし、CUDAほど成熟しているわけではありません。
- 一部演算が未サポート
- メモリ効率に制限あり
などの制約が存在します。
Apple Neural Engine(ANE)による高速推論
Apple独自のNeural Engine(ANE)は推論処理に特化したハードウェアです。
- 画像分類
- 音声認識
- Transformerモデルの一部処理
これらはCore MLへ変換したモデルで特に高速になります。
ただし注意点として、
- ANEを直接利用できるのは「Core MLに最適化したモデル」に限られる
- PyTorchのコードをそのままANEで走らせることは基本的にできない
という点があります。
開発環境として安定している
Apple Silicon Macは
- Python環境が壊れにくい
- パッケージ管理がシンプル(Homebrew / pip)
- OSが静音・省電力で長時間の学習や推論に向く
- Dockerや仮想環境のサポートも良好
といった面で、MLアプリ・AIツールの開発環境として非常に扱いやすい特徴があります。
Macで「得意な機械学習の用途」
高速推論(LLM・画像モデル)
- Llama
- Mistral
- Qwen
- Gemma
などの量子化モデルは、Macでも十分に高速動作します。
Stable Diffusion の推論(画像生成)も高速です。
小〜中規模の学習(ファインチューニング)
- LoRAによる軽量な画像モデル微調整
- テキスト分類などミドルサイズのモデル学習
- 音声モデルの簡易fine-tuning
などは、MシリーズのGPUでも十分実用的です。
AIアプリ・ツールの開発
- Pythonによる前処理や小型ML
- AI APIを使うアプリケーション
- Swift + Core MLで高速推論アプリを作る
こうした用途ではMacが非常に強いです。
Macでは「不向きな機械学習の用途」
以下のような作業は現実的に難しいケースが多いです。
大規模画像モデルの本格学習
Stable Diffusion、DiT、GANなど
→ 数十GB以上のGPUメモリがほぼ必須。
大規模LLM(30B〜70Bクラス)のフル学習
Macではメモリ不足・速度不足。
CUDA依存の研究開発や実験
最新の研究コードの多くはCUDA前提。
解決策:クラウドGPUとの併用
- AWS
- Google Cloud
- Azure
- Lambda Labs
などを使い、
「ローカルで開発 → クラウドで学習」という分業が最も現実的です。
機械学習目的でMacを選ぶなら推奨構成
推奨スペック
- M3 Pro / M3 Max
- メモリ 32GB以上
- SSD 1TB以上
理由
- 大規模モデルを動かすにはメモリが重要
- ユニファイドメモリのためRAM不足=GPU不足
- SSD容量はモデル保管用に多いほど良い
まとめ:Macは「用途に合わせて非常に優秀にも不向きにもなる」
不向き
- 大規模モデルの学習
- CUDAが前提の研究開発
- 巨大LLMのfrom-scratch学習
向いている
- 推論用途(LLM・Stable Diffusion)
- 小〜中規模の学習
- AIアプリや実験環境としての利用
- Core ML を使った高速推論アプリづくり
以上、macは機械学習に向いてないのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
