生成AI時代における「クロールのブロック」とは、自社サイトのコンテンツが生成AIに取得・利用される範囲を制御することを指します。
ただし、この制御は従来のSEOで行ってきた検索エンジン向けのクロール制御とは性質が異なり、同じ感覚で考えると誤解が生じやすい点に注意が必要です。
現在のウェブ環境では、検索エンジンと生成AIは必ずしも同一の経路・同一の目的でページを取得しているわけではありません。
そのため、「検索クローラを止めた=生成AIにも読まれない」とは限らないのが実情です。
クロール制御は大きく2種類に分けて考える必要がある
生成AI関連のクロール制御は、次の2つを分けて考えるのが基本です。
検索エンジン向けのクロール制御
これは従来から行われてきた対策で、GoogleやBingなどの検索エンジンがページを取得・インデックスするかどうかを制御します。
robots.txt や meta robots タグ(noindex など)が主な手段です。
この制御は、検索結果への表示やスニペット生成には直接影響しますが、生成AIの学習や要約利用を完全に防ぐ手段ではありません。
生成AI向けクローラの制御
近年は、OpenAI、Anthropic、Perplexity などが、生成AIの開発・検索・要約用途のために独自のクローラ(User-Agent)を公開しています。
これらは、
- モデル学習のための取得
- AI検索や要約回答のためのリアルタイム取得
- ユーザーがURLを指定した際の取得
といった用途ごとに分かれている場合があり、robots.txtなどで個別に制御できる設計になりつつあります。
ただし、これは業界全体で統一された仕様ではなく、「どの用途の取得をどこまで制御できるか」はAI提供者ごとに異なります。
生成AIにコンテンツが取得される主な経路
生成AIによるコンテンツ取得は、主に次の3つの場面で発生します。
事前学習(モデル学習)用のデータ収集
ウェブ上の公開情報を大規模に収集し、言語モデルの学習データとして利用するケースです。
この段階での取得は、Common Crawl のような公開データセットを経由することもあります。
robots.txt などの設定は「これから先の収集」を抑制する効果はありますが、過去にすでに収集されたデータを完全に除外できるとは限りません。
AI検索・要約(RAG型検索など)
検索型AIが、ユーザーの質問に答えるためにリアルタイムでページを取得・要約するケースです。
この領域では、robots.txt やアクセス制御が比較的効きやすく、意図した制御が反映されやすい傾向があります。
ユーザー操作に基づく取得
ユーザーがAIに対してURLを直接指定した場合、そのページを取得しようとするケースです。
この場合も、ログイン制限やアクセス制御があれば、取得自体を防ぐことができます。
主なブロック手段とその実効性
robots.txt による制御
最も一般的な方法で、AIクローラをUser-Agent単位で制御できます。
ただし、robots.txt はあくまでクローラ側が従うことを前提としたポリシー宣言であり、技術的にアクセスを遮断する仕組みではありません。
そのため、重要なコンテンツでは過信は禁物です。
サーバー・CDN側でのアクセス制御
WAF、IP制限、403応答、レート制限などにより、実際のアクセスを遮断します。
この方法は実効性が高い反面、検索エンジンまで巻き込むとSEOへの影響が出るため、慎重な設計が必要です。
ログイン必須・会員限定化
確実にクローラを排除できる方法ですが、公開性や集客力は大きく下がります。
差別化価値の高いコンテンツ向けの最終手段といえます。
meta robots / X-Robots-Tag
noindex や nosnippet などにより、検索結果やAI要約での表示・引用を抑制できます。
特に Google の AI Overview(AIによる要約表示)に対しては、検索向けの制御が間接的に影響するケースがあります。
「完全なブロック」は現実的ではない
重要な点として、生成AIによるコンテンツ利用を100%防ぐことは、現時点では困難です。
- robots.txt は守られない可能性がある
- すでに学習データに含まれている情報は制御できない場合がある
- 第三者サイトへの転載・引用経由で参照される可能性がある
そのため、現実的な考え方は「完全遮断」ではなく、どの用途の取得を、どこまで許容するかを整理した上で制御することになります。
実務上の判断軸
生成AI向けクロール制御を検討する際は、次の3点を明確にすることが重要です。
- 学習利用を避けたいのか、AI要約・検索での利用を避けたいのか
- サイト全体か、一部コンテンツのみか
- SEO流入や公開性の低下をどこまで許容できるか
これらを整理したうえで、robots.txt、検索向け制御、サーバー側制御を組み合わせるのが、現在の実務では最も現実的な対応といえます。
まとめ
生成AI時代のクロールブロックは、単なる「拒否設定」ではなく、情報公開戦略の一部です。
検索流入・ブランド露出・知的資産保護のバランスを取りながら、目的別に制御していく姿勢が求められています。
以上、生成AIのクロールのブロックについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
