はじめに:機械学習とは
機械学習(Machine Learning)は、コンピュータがデータから規則性を学び、明示的にプログラムされることなく予測や判断を行う技術です。
この「学び方」の違いによって、主に以下の3種類に分類されます。
- 教師あり学習(Supervised Learning)
- 教師なし学習(Unsupervised Learning)
- 強化学習(Reinforcement Learning)
それぞれの手法は、扱うデータや目的、学習過程が大きく異なります。
教師あり学習(Supervised Learning)
概要
教師あり学習は、「入力データ」と「正解ラベル」がセットになったデータを用いて学習を行う手法です。
モデルは「入力と正解の対応関係」を学び、新しいデータに対して適切な出力を予測できるようになります。
主なタスク
- 分類(Classification):データをカテゴリに分類する。
例)メールを「スパム」か「通常」に分類。 - 回帰(Regression):連続値を予測する。
例)家の面積・築年数・立地から家賃を予測。
代表的なアルゴリズム
- 線形回帰(Linear Regression)
- ロジスティック回帰(Logistic Regression)※分類タスクに利用
- 決定木・ランダムフォレスト(Decision Tree / Random Forest)
- サポートベクターマシン(SVM)
- ニューラルネットワーク(Neural Network)
応用例
- 売上・需要予測
- 顧客離反(解約)予測
- 医用画像診断
- 音声認識・画像分類
教師あり学習ではラベル付きデータの品質が性能を大きく左右します。
交差検証や正則化による過学習対策も重要な実務要素です。
教師なし学習(Unsupervised Learning)
概要
教師なし学習は、正解ラベルが存在しないデータから構造や特徴を発見する学習手法です。
モデル自身がデータの分布やパターンを見つけ出します。
主なタスク
- クラスタリング(Clustering):似た性質を持つデータを自動的にグループ化。
例)顧客の購買傾向に基づくセグメント化。 - 次元削減(Dimensionality Reduction):多次元データを要約して本質的な特徴を抽出。
例)PCAによるデータの可視化・ノイズ除去。 - 特徴抽出(Feature Extraction):モデル入力に有用な要素を抽出。
代表的なアルゴリズム
- K平均法(K-Means Clustering)
- 階層的クラスタリング(Hierarchical Clustering)
- DBSCAN(密度ベースクラスタリング)
- 主成分分析(PCA)/t-SNE/UMAP(次元削減)
- オートエンコーダ(Autoencoder)
応用例
- 顧客セグメンテーション(マーケティング分析)
- 異常検知(例:クレジットカード不正利用)
- 画像の特徴抽出・圧縮
- 文書の類似性分析
さらに近年では、自己教師あり学習(Self-supervised Learning)という発展形も登場。
擬似ラベルを生成して表現を学習し、教師ありタスクの性能を底上げする技術(SimCLR、MAEなど)が注目されています。
強化学習(Reinforcement Learning)
概要
強化学習は、エージェント(学習主体)が環境と相互作用しながら報酬を最大化する行動方針(ポリシー)を学ぶ手法です。
正解ラベルはなく、行動結果に対して与えられる「報酬(Reward)」が唯一の学習信号となります。
モデルは試行錯誤を繰り返し、長期的に最も高い報酬を得る行動戦略を見つけます。
この仕組みはマルコフ決定過程(MDP)として定式化されます。
主な構成要素
- 状態(State):現在の環境の状況
- 行動(Action):エージェントの選択肢
- 報酬(Reward):行動結果に対するフィードバック
- 方策(Policy):行動を決定するルール
- 価値関数(Value Function):将来の報酬の期待値
代表的なアルゴリズム
- Q学習(Q-Learning)※オフポリシー型
- SARSA(オンポリシー型)
- Deep Q-Network(DQN)
- 方策勾配法(Policy Gradient)
- Actor–Critic法
- モデルベース強化学習(Model-based RL)
応用例
- ゲームAI(囲碁・将棋・Atariなど)
- 自動運転制御
- 産業用ロボットの最適動作
- 広告配信・レコメンド最適化
実務では、報酬設計と探索・活用バランス(Exploration–Exploitation)が成功の鍵。
ε-greedy法やUCB法、エントロピー正則化などの探索戦略がよく用いられます。
3手法の比較まとめ
| 項目 | 教師あり学習 | 教師なし学習 | 強化学習 |
|---|---|---|---|
| データ構造 | 入力+正解ラベル | 入力のみ | 状態・行動・報酬 |
| 目的 | 予測・分類 | 構造の発見・圧縮 | 行動方針の最適化 |
| 学習方式 | 教師の指導あり | 自己探索型 | 試行錯誤型 |
| 代表手法 | 回帰・分類 | クラスタリング・次元削減 | Q学習・DQN・Actor–Critic |
| 主な用途 | 売上予測・画像認識 | 顧客分析・異常検知 | 自動運転・ゲームAI |
まとめ
- 教師あり学習:ラベル付きデータから「正解を学ぶ」
- 教師なし学習:ラベルなしデータから「構造を発見する」
- 強化学習:試行錯誤を通して「最適な行動を学ぶ」
これらは互いに補完関係にあり、深層強化学習(Deep Reinforcement Learning)のように複合的に活用されるケースも多く見られます。
マーケティング・医療・ロボティクス・自動運転・ゲームなど、あらゆる分野でこれらの手法が実用化されています。
以上、機械学習の教師あり・教師なし・強化学習についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
