クラス分類とは、データをあらかじめ定義されたカテゴリ(ラベル)に自動的に分類するための機械学習タスクです。
これは「教師あり学習(Supervised Learning)」の代表例であり、学習データには入力(特徴量)と正解ラベルがセットで与えられます。
モデルはそれらの関係を学び、未知のデータに対して「どのクラスに属するか」を確率的に推定します。
目次
クラス分類の主なタイプ
二値分類(Binary Classification)
2つのクラスに分ける最も基本的な形式。
例:スパム or 非スパム、合格 or 不合格。
多クラス分類(Multiclass Classification)
3クラス以上から1つを選ぶタスク。
例:手書き数字認識(0〜9)。
マルチラベル分類(Multi-label Classification)
1つのサンプルに複数のラベルを同時に付与する形式。
例:画像に「犬」「屋外」「昼間」など複数タグを付けるケース。
主なアルゴリズムと特徴
ロジスティック回帰(Logistic Regression)
- 最も基本的で解釈性の高い分類モデル。
- シグモイド関数で確率を出力し、閾値によりクラスを判定。
- 線形モデルのため、非線形分離には多項式特徴やカーネル拡張が有効。
- 多クラス対応には「One-vs-Rest」または「ソフトマックス回帰」を利用。
k近傍法(k-NN)
- 新しいデータに最も近いk個の学習サンプルを参照し、投票でクラスを決定。
- 非線形データに柔軟だが、大規模データでは計算負荷が高い。
- 高次元データでは距離計算が不安定になる(次元の呪い)ため注意。
決定木・ランダムフォレスト(Decision Tree / Random Forest)
- 条件分岐を繰り返して分類する手法。
- ランダムフォレストは複数の木を組み合わせることで過学習を抑え、安定した性能を発揮。
- 重要特徴の算出にも使えるが、偏りを防ぐためPermutation ImportanceやSHAPによる解釈が望ましい。
サポートベクターマシン(SVM)
- クラスを分ける最適な境界(超平面)を学習。
- カーネル法により非線形データも扱える。
- 精度は高いが、大規模データには不向き。確率出力を得るにはPlattスケーリングなどの校正が必要。
ニューラルネットワーク(Neural Network)
- 非線形関係を強力に学習できる柔軟なモデル。
- 特に画像分類ではCNN、テキスト分類ではRNNやTransformer系が主流。
- 大量のデータ・計算資源を要するが、表現学習能力は極めて高い。
- 正則化(Dropout・BatchNorm)や最適化(Adam等)が性能を支える。
モデル性能の評価指標
単純な正解率だけでは不十分なため、さまざまな指標が利用されます。
| 指標 | 説明 |
|---|---|
| Accuracy(正解率) | 全体のうち正しく分類できた割合。クラス不均衡では過大評価されやすい。 |
| Precision(適合率) | モデルが「正」と予測したうち、実際に正解だった割合。 |
| Recall(再現率) | 実際の正例のうち、モデルが正と判定できた割合。 |
| F1-score | PrecisionとRecallの調和平均。バランス評価に有効。 |
| ROC-AUC / PR-AUC | モデル全体の識別性能。クラス不均衡下ではPR-AUCがより有用。 |
加えて、確率の校正(Calibration)を行うと、意思決定(例:リードスコアリングや医療診断)で信頼性が向上します。
データ前処理と品質管理
分類精度を左右するのはアルゴリズムよりもデータ前処理と特徴設計です。
主な工程
- 欠損値処理:削除または統計的補完。
- スケーリング:標準化・正規化で特徴量のスケールを統一。
- カテゴリ変数のエンコーディング:One-HotやTarget Encodingなど。
- クラス不均衡対策:SMOTE・クラス重み付け・Focal Lossなど。
- データリーク防止:スケーラーやエンコーダの学習は訓練データ内に限定。
実務ワークフロー(Pipeline)
- データ収集と前処理
- 特徴量エンジニアリング
- データ分割(Train/Validation/Test)
- モデル選定と学習(Grid Search, Bayesian Optimizationなどで調整)
- 評価と閾値最適化(F1、PR-AUC、コスト最小化など)
- 運用と監視(MLOps:データドリフト・再学習ポリシー・説明可能性)
応用領域
- マーケティング:解約(Churn)予測、CV予測、LTV分類、リードスコアリング
- 医療:疾患予測、画像診断、薬効スクリーニング
- 金融:信用リスク分析、不正検知
- 製造:異常検知、不良品分類
- 自然言語処理:感情分析、ニュース分類、意図判定
まとめ
クラス分類は機械学習の基礎でありながら、実務で最も多くの課題に直結する技術です。
高精度なモデルを作るには、単にアルゴリズムを選ぶだけでなく、
- データ理解
- 特徴量設計
- 不均衡対策
- 適切な評価指標の選択
- 再現性・監視の仕組み
といった「運用視点の最適化」が不可欠です。
これらを踏まえた設計ができれば、ビジネス判断に直結する“信頼できるAIモデル”を構築できます。
以上、機械学習のクラス分類についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
