機械学習で時系列予測はできるのか

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時系列予測は、金融・需要予測・気象データ解析・運用最適化など、幅広い領域で重要な技術です。

近年は、従来の統計モデルに加え、機械学習や深層学習モデルが実務で広く活用されるようになり、予測の精度と柔軟性が大きく向上しています。

以下では、機械学習による時系列予測の仕組み・代表モデル・実装プロセス・注意点までを、専門的にかつ体系的にまとめて解説します。

目次

機械学習による時系列予測は可能か

結論として、機械学習は時系列予測に十分利用でき、むしろ従来手法と比べ高い表現力を発揮するケースが多いです。

従来までは ARIMA、SARIMA、ETS などの統計モデルが主流でしたが、計算資源・データ量の増大とともに、以下のような機械学習モデルの利用が拡大しています。

  • ランダムフォレスト / XGBoost などの決定木系アルゴリズム
  • LSTM / GRU などの再帰型ニューラルネットワーク
  • Transformer 系の深層学習モデル

特に、外部説明変数(気温、イベント、センサー入力など)が多い状況や、非線形な振る舞いを含むデータでは、機械学習が優位に働くケースが多いです。

時系列予測に使われる主要なモデル

決定木ベースの機械学習モデル

機械学習といって最初に多く使われるのが、ツリー系のアルゴリズムです。

ランダムフォレスト

  • 多数の決定木をアンサンブル
  • 非線形かつ複雑なパターンの学習が得意
  • 特徴量の重要度が解釈しやすい

XGBoost / LightGBM / CatBoost

  • 高速・高精度の勾配ブースティングモデル
  • 多くの実務で非常に高い精度を出す
  • ラグ特徴量や移動平均などを適切に設計すると強力

特徴量エンジニアリングの自由度が高く、実務的に扱いやすいのが最大の長所です。

深層学習モデル

LSTM / GRU(RNN 系)

  • シーケンスデータを入力とする構造
  • 過去情報の保持に強く、時間依存を表現しやすい
  • 長期に渡る依存関係をある程度捉えられる

LSTM と GRU は自然言語処理や音声処理でも広く利用されてきたモデルで、「時系列専用」というより “時系列を含むシーケンスデータ全般に適した構造” と言えます。

Transformer 系(近年の主流)

  • 自己注意機構(Self-Attention)により長期依存の把握が得意
  • 大規模データセットに対して特に高い表現力
  • 時系列の長期予測分野で研究が非常に活発

ChatGPT を含む多くのモデルと同じアーキテクチャですが、時系列予測専用に改良されたバリエーションも多く存在します(Time Series Transformer、Temporal Fusion Transformer など)。

時系列予測の実装プロセス

データ準備

最低限必要なのは以下です。

  • timestamp(日時)
  • 目的変数(売上・温度・電力量・流量・アクセスなど自由)
  • 外部説明変数(天候、センサー値、イベントフラグなど)

特徴量エンジニアリング(精度に直結)

時系列予測で最重要の工程です。

代表的なもの

  • ラグ特徴量(過去1日、7日、30日など)
  • 移動平均(MA7、MA30 など)
  • 曜日・月・年などの周期表現
  • 差分(Δ)
  • 統計特徴(分散、最大値、最小値など)
  • 外部変数のラグや移動平均

ツリー系アルゴリズムは特徴量設計の恩恵が大きく、精度向上に直結します。

モデル学習

  • XGBoost / LightGBM → 多くの現場で扱いやすく汎用性が高い
  • LSTM / GRU → 長期的依存を扱いたい場合に有効
  • Transformer → 大規模データかつ長期予測で候補に上がる

どのモデルが最適かは、データ量・周期性・ノイズ強度・外部変数の有無などで変わります。

未来の説明変数を整備

予測を行う際は、未来の説明変数も必要になります。

  • 未来の天気 → 予報データを使用
  • 未来のイベント → 事前にスケジュールを設定
  • カレンダー特徴 → 月・日・曜日は自動生成

未来データが自動で得られない場合は、モデルを2段構成にする(先に説明変数を予測 → 本予測に利用) といった工夫もあります。

評価方法

時系列は過去→未来の順序を守る必要があり、シャッフルは行いません。

一般的な方法

  • 時系列クロスバリデーション(rolling forecasting origin)
  • 時点ごとの予測誤差評価(MAPE / RMSE / MAEなど)

これにより、未来の予測性能に近い精度を評価できます。

機械学習では難しいケース

  • データ量が非常に少ない
  • データに構造変化(レジームチェンジ)がある
  • 外部要因が大きく、予測不能な変動が強い
  • 過去データと未来データの分布が大きく異なる(例:新製品)

これらでは、統計モデルやベイズモデリングとの併用が効果を発揮することがあります。

時系列予測に利用される代表的ライブラリ

Python

  • scikit-learn
  • XGBoost / LightGBM / CatBoost
  • PyTorch
  • TensorFlow
  • gluonts(Amazon)
  • darts(時系列特化で扱いやすい)
  • statsmodels(統計モデル)
  • Prophet(シンプルな構造で実用的だが万能ではない)

APIサービス

  • TimeGPT(Nixtla)などの時系列特化LLM

ライブラリ選択は、データ量・必要精度・モデルの可搬性などで決まります。

まとめ

  • 機械学習は時系列予測に対して非常に強力に利用できる
  • 特徴量設計・データ構造理解が精度の要
  • ツリー系モデルは扱いやすく、多くの現場で成果が出ている
  • 深層学習モデル(特に Transformer)は大規模データで優位性がある
  • 統計モデルと機械学習を組み合わせるケースも多い
  • 未来の説明変数の準備が、実運用において重要ポイントとなる

従来の線形モデルでは捉えきれなかった複雑な非線形パターンを表現できるため、適切なモデル選択と特徴量設計さえできれば、機械学習による時系列予測は非常に実用的なアプローチになります。

以上、機械学習で時系列予測はできるのかについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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