機械学習における「分類(Classification)」は、与えられたデータがどのカテゴリに属するのかを予測するタスクです。
スパム判定、画像認識、医療診断システム、異常検知など、多くの分野で基盤技術として利用されています。
ここでは、分類モデルの基本概念から主要アルゴリズム、評価方法、そして実際の開発プロセスまでを体系的に整理して解説します。
分類モデルとは何か
分類とは、入力データの特徴量(Feature)を基に、事前に定義されたクラス(カテゴリ)を予測することです。
例
- 「猫」か「犬」かを画像から判断する
- 文章が「ポジティブ」か「ネガティブ」かを予測する
- センサー値から機械が「正常」か「故障」かを分類する
分類問題は大きく3種類に分けられます。
二値分類(Binary Classification)
2つのクラスを分類するタスク。
例:スパム or 非スパム、正常 or 異常
多クラス分類(Multi-class Classification)
3つ以上の複数クラスの分類。
例:画像分類で「猫/犬/鳥」
マルチラベル分類(Multi-label Classification)
1つのデータに複数ラベルを付与できるタスク。
例:画像に対して「人物」「車」「夜」、「光」など複数タグを付与
それぞれのタスクに応じて適したアルゴリズムが異なります。
代表的な分類アルゴリズム(特徴と使いどころ)
以下では、実務・研究でよく使われる分類モデルを、特徴・メリット・向いている場面とともにまとめます。
ロジスティック回帰(Logistic Regression)
特徴
- 最も基本的な分類モデル
- 解釈性が高く、計算が高速
- 出力はクラスに属する「確率」
仕組み
特徴量の線形結合をシグモイド関数で0〜1の確率に変換し、閾値(通常0.5)で分類します。
向いている場面
- まずはシンプルなベースラインモデルを作りたいとき
- 特徴量の重要性を知りたい場合
k近傍法(k-Nearest Neighbors, k-NN)
特徴
- “近傍のデータが同じクラスである”という考え方
- 学習プロセスが存在しない(lazy learning)
- 推論時に距離計算を行う
注意点
- データ量が多いと計算が重くなる
- 特徴量スケーリングが必須
向いている場面
- データが少量で、明確なパターンが空間的に現れる場合
決定木(Decision Tree)
特徴
- Yes/Noの条件分岐を繰り返して分類
- 人間が読みやすいモデルを作れる
- カテゴリ変数をそのまま扱える
注意点
- 単一の決定木は過学習しやすい
ランダムフォレスト(Random Forest)
特徴
- 多数の決定木をランダムに構築し、投票で分類
- 単一の決定木より高精度で過学習しにくい
- 特徴量の重要度を把握しやすい
向いている場面
- 安定した高精度モデルを作りたいケース
- 前処理負荷を下げたい場合(スケーリング不要)
勾配ブースティング系(XGBoost / LightGBM / CatBoost)
特徴
- “誤分類した部分を改善するように”木を積み重ねるアルゴリズム
- 表形式データでは実用面でトップクラスの性能
- 大規模データにも強く、欠損値への耐性が高い
活躍する場面
- 競技プログラミング(Kaggleなど)
- 精度最優先の分類タスク
- 取り扱いが複雑な特徴量が混在するデータセット
サポートベクターマシン(SVM)
特徴
- クラス境界を最も“余白(マージン)”が広い位置で分離する
- カーネルを使えば非線形パターンも扱える
注意点
- 大規模データには不向き(特にカーネルSVM)
- ハイパーパラメータ調整が難しい
ニューラルネットワーク(Deep Learning)
特徴
- 多層構造で高度な非線形パターンを学習
- 大規模データセットにおいて圧倒的性能
- 特に画像・音声・自然言語で主力
代表例
- CNN(画像分類)
- LSTM / GRU(時系列)
- Transformer / BERT(テキスト分類)
分類モデルの評価指標(精度以外が重要)
分類では「Accuracy(正解率)だけを見て評価する」のは危険です。
特にクラスの偏りが大きいデータでは、Accuracyが高くても実用的ではない場合があります。
以下に、分類モデルでよく使われる指標を整理します。
Precision(適合率)
予測したポジティブのうち、正しく分類できた割合。
Recall(再現率)
本来ポジティブであるデータをどれだけ見逃さなかったか。
F1スコア
PrecisionとRecallの調和平均。
クラス不均衡問題に強い。
ROC-AUC
しきい値に依存しないモデルの識別能力の総合評価。
PR-AUC(Precision-Recall AUC)
不均衡データで特に有用な指標。
混同行列(Confusion Matrix)
誤分類の傾向を視覚的に把握できる指標として重要。
分類モデル構築の実務プロセス
機械学習で分類モデルを作る場合、一般的には次のプロセスを踏みます。
データ前処理
- 欠損値処理
- カテゴリ変数のエンコーディング(one-hot, target encodingなど)
- 必要に応じたスケーリング(特に距離系モデル)
- 外れ値の扱い
- テキストのベクトル化(TF-IDFやEmbeddingなど)
モデル選定
- シンプルな基準:ロジスティック回帰
- 決定木やランダムフォレスト:解釈性の確保
- 高精度を求める:XGBoost・LightGBM
- 大量データや非構造データ:ディープラーニング
ハイパーパラメータ調整
- Grid Search
- Random Search
- Bayesian Optimization(最適化効率が高い)
評価と改善
- 適切な指標によるモデル評価
- 特徴量エンジニアリング
- 過学習対策(正則化、ドロップアウト、クロスバリデーション)
- しきい値調整によるPrecision/Recallのバランス調整
まとめ
分類モデルは機械学習の基礎であり、さまざまなアルゴリズムが目的に応じて使い分けられます。
- ロジスティック回帰:解釈性と計算効率
- ランダムフォレスト:安定した高性能
- XGBoost/LightGBM:構造化データでトップクラス
- SVM:境界が複雑な問題に強い
- 深層学習:画像・音声・テキストで圧倒的
さらに、Accuracyだけでは不十分で、F1やAUCなど複数指標を使うことが重要です。
分類モデルを理解することは、より高度な機械学習モデルや応用技術(異常検知、自然言語処理、時系列分類など)を学ぶ基盤にもなります。
以上、機械学習の分類モデルについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
