機械学習の開発環境づくりは、いつの時代も悩みのタネです。
Python のバージョン違い、ライブラリの依存地獄、GPU対応の複雑さ。
環境構築だけで数日溶けた経験がある人も多いのではないでしょうか。
そこでよく名前が挙がるのが Docker。
“環境の再現性が高い” “どのマシンでも同じセットで動く” といったメリットが語られていますが、実際のところどこまで正しいのか?
そして「今のDocker事情」に照らして、どこを注意すべきなのか?
この記事では、機械学習の開発環境として Docker を使う際の内容を、最新の技術動向をふまえて一つひとつ精査しつつ、ブログとして読みやすい形でまとめ直してみました。
Dockerを使う理由はやっぱり明確だった
まず結論からいうと、「機械学習はDockerで環境を分離する」という考え方は依然として正しいです。
その背景には、ML特有の厄介さがあります。
- ライブラリごとの依存関係が深い
- GPU対応のためのCUDAまわりがシビア
- プロジェクト間で環境がぶつかりやすい
- 本番と開発で動作がズレやすい
こうした問題をまとめて避けられるのがDockerで、環境を箱ごと丸ごと封じ込めるアプローチは現在でもベストに近い選択肢です。
ホスト環境を汚さずに済むのも魅力で、PCがライブラリまみれになったり、謎の競合が起こって不安定になる…といったトラブルも減ります。
CPU環境だけなら迷わず構築可能
CPU版での機械学習環境づくりについては、これまでに語られてきた方法が基本的にそのまま使えます。
- Python入りの軽量Linuxをベースにする
- 必要なライブラリをまとめてインストールする
- 開発用のフォルダ(notebooks や data)をホストと共有する
- ブラウザからJupyterLabにアクセスする
このあたりは大きな変更点もなく、トラブルも起こりにくい分野です。
むしろ「Dockerだからこそ安定して整う」部分といえるでしょう。
GPU環境は“細部の正確さ”が命
一方で、GPU環境の構築は少し事情が変わってきます。
仕組みはシンプルなのに、細かなバージョンの食い違いで簡単に動かなくなるからです。
特に重要なのは次のポイント。
VIDIA Container Toolkit が正式名称
昔は「nvidia-docker」と呼ばれていましたが、現在は NVIDIA Container Toolkit が正式名称です。
インストールもこの名称で進めるのが最新の正しい方法です。
PyTorch公式イメージは便利だが“バージョンは常に変わる”
Docker Hub で公開されている PyTorch の公式イメージは非常に便利ですが、タグが頻繁に更新されます。
ネットの記事に書かれた古いタグをそのまま使うと、動かないこともしばしば。
そのため、GPU環境を作るときは必ずその時点の最新タグを確認する必要があります。
requirements に torch を入れないほうが安全
PyTorchの公式イメージには、最適なCUDA構成でビルドされたtorchがすでに入っています。
ここに pip で別のバージョンを上書きすると、CUDAとの整合性が崩れ、「GPUが認識しない」「突然エラーが出る」という罠にはまりやすくなります。
GPU環境を壊さないためにも、torch系は追加インストールしない方が堅実です。
docker compose の書き方は“最新のルール”を知るべき
意外と見落としがちなのが、docker compose で GPU を使うための記述です。
以前は Swarm 用の設定をそのまま紹介している記事も多いのですが、ローカル開発ではその設定は無視されるケースがほとんど。
いまのDocker composeでは、もっとシンプルに扱えます。
- 「GPUを使いたい」= “gpus: all” と書けばOK
この方法が公式にも推奨されており、最もわかりやすく、トラブルが少ない書き方といえます。
プロジェクト構成やデータ管理の考え方は非常に健全
機械学習プロジェクトのフォルダ構成についても、データを raw / interim / processed に分ける方針は王道であり、むしろ現場向けの良いやり方です。
Notebook・ソースコード・データをホストと共有しつつ、実行環境だけDockerに閉じ込める設計は長期的に見ても非常に管理しやすい構造です。
バージョン管理は“より強固に”しておくと安心
ライブラリを固定して再現性を高めるという考え方も正しいのですが、より正確に、より長く再現できる環境を保つには少しだけ強化するとよいでしょう。
- 依存関係を完全に固定したい → pip-tools
- プロジェクト丸ごと管理したい → poetry
といったツールを使うと、開発チーム全体で統一された環境を保ちやすくなります。
以上、Dockerで構築する機械学習環境についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
