教師なし学習(Unsupervised Learning)は、正解ラベルが付与されていないデータから、潜在的な構造・パターン・法則性を抽出する学習方法の総称です。
通常の教師あり学習は「入力→正解」という関係がデータとして与えられていますが、教師なし学習ではその“正解”が存在しません。
そのため、アルゴリズムはデータの形状・分布・類似性といった内在する特徴そのものに基づいて構造を発見します。
特に現代の情報環境では、ラベルのないデータ(画像・文章・行動ログなど)が圧倒的に多く、教師なし学習はそれらを解析するための基盤技術となっています。
教師なし学習で代表的な手法
以下では、教師なし学習で頻用される手法を体系的に整理します。
クラスタリング(Clustering)
データを「似たもの同士」に自動でグループ化する手法群です。
代表的な手法は以下の通り。
K-means
- 最も利用されるクラシックな手法
- あらかじめクラスタ数 (K) を指定する
- 各点が属すべきクラスタ中心を交互に更新しながら最適化する
特徴:高速・シンプル
注意点:クラスタ数の設定やスケールの影響を強く受ける
階層的クラスタリング(Hierarchical Clustering)
- データを木構造的にまとめていく
- “木”のどの高さで区切るかによってクラスタ数が決まる
特徴:階層構造の理解に向いている
DBSCAN
- 半径 ε と最小サンプル数を設定し、密度の高い領域をクラスタとみなす
- クラスタ数の指定不要
- ノイズ(外れ値)に強い
Gaussian Mixture Model(混合ガウスモデル, GMM)
- データが複数のガウス分布の混合で表現できると仮定
- あるデータがどのクラスタに属するかを確率的に扱える
特徴:K-meansより複雑なクラスタ構造にも対応可能
次元削減(Dimensionality Reduction)
大量の特徴を、情報をなるべく落とさずに低次元に圧縮する技術です。
可視化やノイズ除去、前処理として利用されます。
PCA(Principal Component Analysis, 主成分分析)
- 線形変換によって、データの分散を最大化する方向へ射影
- 高次元データから主要な特徴方向(主成分)を抽出
用途:可視化、特徴圧縮、ノイズ除去
t-SNE
- 非線形次元削減手法
- 元の空間の「局所的な類似性」を保ちつつ、2D/3D空間に可視化
注意点:
- 可視化専用に近い(新しいデータを同じ空間に射影しにくい)
- 大規模データでは計算が重い
UMAP
- t-SNE に似た非線形次元削減だが、より高速で安定しやすい
- クラスタ構造が比較的保たれやすい
用途:ベクトル表現(埋め込み)の可視化など
異常検知(Anomaly Detection)
通常のパターンから外れたデータを検出する手法。
ラベルなしデータに対して行われることが多い典型的な教師なし学習タスクです。
代表的手法
One-Class SVM
- 正常データの境界を学習し、その外側を異常とみなす
Isolation Forest
- 木構造をランダム生成し、「隔離されやすさ」から異常度を計算
Autoencoder ベースの異常検知
- 入力を再構成するモデルを学習し、
再構成誤差が大きいデータを異常とみなす
自己符号化器(Autoencoder)
深層学習を用いた教師なし学習の代表手法。
仕組み
- 入力 → 潜在変数(低次元表現)に圧縮
- 潜在変数 → 元の入力を復元
- 再構成誤差を小さくするように学習
得られるもの
- データの本質を捉えた潜在表現(特徴量)
- ノイズ除去や次元削減に利用可能
- 再構成誤差を使った異常検知
生成モデル(Generative Models)
生成モデルは、データの分布そのものを学習し、新しいデータを生成するモデル群です。
教師なし学習と扱われることが多い領域ですが、厳密には “自己教師あり学習” や “敵対的学習” の性質を部分的に持つモデルも含まれます。
ただし、一般的な解説としては教師なし学習の枠に含めることが多く問題ありません。
GAN(Generative Adversarial Networks)
- 生成器(Generator)と識別器(Discriminator)が競い合いながら学習
- 高品質な画像生成が可能
VAE(Variational Autoencoder)
- 潜在変数に確率分布を仮定し、データを生成可能にするモデル
用途例:データ生成、ノイズ除去、潜在変数解析など
教師なし学習が活躍する場面
ラベル付けされていないデータの分析
現実世界の大量データはラベルが存在しないことが多く、教師なし学習の価値が最大限に発揮されます。
データ内部の構造を探索したい場合
- どのようなグループが存在するのか
- 分布がどのように形成されているのか
- 高次元データの特徴空間にどのような関係性があるのか
こうした構造的特徴を機械的に発見できます。
他のモデルへの前処理としての活用
- 次元削減
- 特徴抽出
- ノイズ除去
- 潜在表現(embedding)の生成
これらは教師あり学習モデルの性能向上にも重要です。
教師なし学習の課題・注意点
明確な「正解」がないため評価が難しい
- クラスタリング評価指標としてシルエットスコア、Calinski–Harabasz 指標、Davies–Bouldin 指標などがある
- しかし、それらはあくまで参考値であり「絶対的な正解」を保証しない
前処理・ハイパーパラメータに敏感
- 標準化やスケーリングによって結果が大きく変わる
- K-means のクラスタ数、DBSCAN の ε・min_samples などは要チューニング
データの性質への依存度が高い
- 分布が偏っている
- ノイズが極端に多い
- 次元が非常に高い
などの場合、手法選択や工夫が必要
まとめ
教師なし学習は、ラベルのないデータからパターン・構造・分布を抽出する強力な技術です。
クラスタリング、次元削減、異常検知、生成モデルといった手法が含まれ、高次元データ解析や潜在特徴抽出などに広く利用されています。
一方で「評価が難しい」「前処理の影響を受けやすい」という特性もあるため、手法の理解と適切な実験設計が重要です。
以上、機械学習の教師なし学習についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
