機械学習を用いた自然言語処理モデルについて

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目次

自然言語処理(NLP)と機械学習の位置づけ

自然言語処理は、人間の言語情報をコンピュータが理解・生成できるようにする技術領域です。

その中心には機械学習、特に深層学習があり、現在の主要モデルはほぼすべてこの技術を用いて構築されています。

主な応用タスク

  • テキスト分類
  • 感情分析
  • 機械翻訳
  • 要約
  • 質問応答
  • 対話システム
  • 固有表現抽出
  • 文書検索・類似度計算
  • 文生成(LLM)

NLP モデルの発展の歴史

ルールベース → 統計的手法

初期の NLP は辞書や文法ルールを手作業で構築するルールベース方式が主流でしたが、運用コストや拡張性の課題から、以下のように発展しました。

  • 統計的言語モデル(n-gram)
  • HMM(隠れマルコフモデル)
  • CRF(条件付き確率場)
  • SVM などの機械学習分類器

これらは特徴量の設計が重要で、人間が手作業で抽出する必要がありました。

深層学習(RNN / LSTM / CNN 時代)

2010 年代前半以降、特徴量抽出も含めてニューラルネットワークで学習する方式が主流になります。

RNN(Recurrent Neural Network)

  • 逐次的にテキストを処理
  • 文脈理解に強いが、長距離依存には弱い

LSTM / GRU

  • 勾配消失の問題を軽減
  • RNN より長文に強い
  • しかし並列化しにくく、大規模学習には不向き

CNN を用いた NLP

  • 局所的なパターン認識が得意
  • テキスト分類に高い性能
  • ただし文全体の依存関係を表現する力は Transformer に比べて弱い

Transformer の革新

2017 年の論文「Attention Is All You Need」で Transformer が登場。

これは NLP の歴史を大きく変えました。

Transformer の特徴

  • Self-Attention により文中の任意の単語同士の関係を直接捉えられる
  • 長距離依存に強い
  • 並列学習が容易で高速
  • スケールしやすく大規模モデルに向いている

この構造が現在の NLP モデルの基盤となっています。

大規模事前学習モデル(PLM)の登場と種類

Encoder 型モデル(理解系)

代表例

  • BERT
  • RoBERTa
  • DeBERTa

特徴

  • 双方向の文脈を同時に扱う
  • 文分類・検索・固有表現抽出などに向く

Decoder 型モデル(生成系)

代表例

  • GPT シリーズ
  • LLaMA 系

特徴

  • 自己回帰型モデル
  • テキスト生成、翻訳、要約、対話などに強い

Encoder-Decoder 型モデル(理解+生成)

代表例

  • T5
  • BART

特徴

  • 入力を理解し、別の形式で出力を生成するタスクに強い
  • 機械翻訳、要約、パラフレーズなどに最適

事前学習タスクの詳細

Masked Language Modeling(MLM)

BERT 系で使用
文中を隠して予測する

例:
「私は [MASK] を食べた」 → 「寿司」

自己回帰型言語モデル(GPT 型)

次単語を予測していく


「私は昨日寿司を」 → 「食べた」

デノイジング(T5 / BART)

壊した文を復元する

  • 文を順序入れ替え
  • 欠損させる
  • ノイズを加える

大規模言語モデル(LLM)の追加学習プロセス

SFT(Supervised Fine-Tuning)

タスク専用の教師データで微調整。

Instruction Tuning(指示への応答能力向上)もここに含まれることが多い。

RLHF(強化学習 + 人間のフィードバック)

人間の好む回答を学習していく。

  • 望ましい出力
  • 安全かつ一貫した回答
  • 丁寧で自然な応答

が得られるよう最適化される。

マルチモーダルモデルへの進化

現代の AI はテキストだけでなく、以下を統合する方向へ進化しています。

  • 画像(Vision Transformer との統合)
  • 音声認識 / 音声生成モデルとの接続
  • 動画やセンサーデータ
  • マルチモーダル埋め込み空間の構築

これにより、より人間に近い理解能力を持つモデルへと発展しています。

今後の NLP の方向性

Reasoning(推論能力)の強化

LLM が単なる文章生成ではなく、論理的推論を行う能力を高める方向へ。

小型高性能モデルの普及

端末上で動く軽量 LLM(LLaMA、Phi など)が増加。

長文コンテキストの扱い

数十万トークン規模の文脈を保持するモデルも一般化しつつある。

モジュール化・ツール利用

LLM は外部ツールを呼び出して処理を補強する方向へ進化。

まとめ

機械学習を用いた NLP モデルは、以下の流れで大きく進化してきました。

  • ルールベース → 統計的手法 → 深層学習
  • RNN / CNN から Transformer へ
  • BERT / GPT / T5 などの大規模事前学習モデルが標準に
  • Instruction Tuning と RLHF により対話・生成能力が向上
  • マルチモーダル化による総合的な理解能力の拡張

以上、機械学習を用いた自然言語処理モデルについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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