「AIエージェント」は英語では AI agent と表現されます。
これは直訳としても、英語圏での実際の使用状況としても、もっとも一般的で標準的な言い方です。
ただし、英語の agent という語は文脈によって意味の幅が広く、単に「AI agent = 賢いAI」と理解してしまうと、専門的な場面ではズレが生じることがあります。
そこで以下では、基本定義 → 関連用語との違い → 実務・学術の使い分けという順で、正確に整理します。
AI agent の基本的な意味
一般的に AI agent とは、次のように説明されます。
AI agent
A system or program that can pursue a goal by perceiving its environment, making decisions, and taking actions, often with a certain degree of autonomy.
日本語にすると、
AIエージェント
環境を認識し、意思決定を行い、目標達成のために行動するAIシステム
という意味になります。
重要なのは、判断だけでなく「行動」まで含む点です。
この点が、単なるAIモデルやチャットボットとの大きな違いになります。
なぜ “agent” という言葉が使われるのか
英語の agent には、もともと次のような意味があります。
- 代理として行動する存在
- 目的を持って何かを実行する主体
- 他者や環境に影響を与える行為者
そのため AI agent という言葉には、
「与えられた目的に向かって、自ら判断し、何らかの行動を起こす存在」
というニュアンスが含まれます。
ただし注意点として、agent = 常に高度に自律的と決まっているわけではありません。
学術的には、非常に単純なルールベースのシステムであっても「エージェント」と呼ばれることがあります。
学術的な文脈での「agent」
AI分野の教科書や論文では、agent はかなり広い概念として定義されます。
典型的な定義は、
- 環境を「知覚(perceive)」し
- 何らかの「行動(act)」を行う存在
というものです。
この定義では、
- 人工知能
- ロボット
- ソフトウェア
- 非常に単純な自動システム
まで含まれ得ます。
そのため、学術文脈の agent は必ずしも「高度なAI」や「自律的存在」を意味しない、という点は重要です。
近年の実務・プロダクト文脈での AI agent
一方、近年のプロダクト開発やビジネス文脈で使われる AI agent は、意味がやや絞られています。
この文脈では、多くの場合、
- 目標が与えられている
- 状況に応じて判断する
- ツールや外部システムを使って実行する
- 人間の逐一の指示なしでもある程度動く
といった 自律性・能動性 が強調されます。
そのため最近は、agentic AI(エージェンティックAI)autonomous AI agent(自律型AIエージェント)といった言い方もよく見られます。
AIモデル(LLM)との違い
英語圏では、次の区別がよく意識されます。
- AI model / LLM
→ 主に「推論・生成」を行う - AI agent
→ 推論に加えて「計画・実行」を行う
たとえば、大規模言語モデル(LLM)は、それ単体では行動主体ではありません。しかし、
- タスクを分解し
- 次に何をすべきか判断し
- 外部ツールやAPIを呼び出し
- 結果を踏まえて次の行動を選ぶ
といった仕組みを組み合わせることで、AI agent の中核として機能すると説明されることが多いです。
AI assistant との違い
AI assistant という言葉もよく使われますが、こちらは一般に、
- ユーザーの指示に反応する
- 補助・支援が主目的
- 主導権は人間側にある
というニュアンスを持ちます。
一方 AI agent は、
- 目標達成が主目的
- 状況に応じて自律的に判断・実行する
と説明されることが多く、assistant は「反応型」、agent は「能動型」と対比されることがあります。
ただし、これも厳密な線引きがあるわけではなく、製品説明や文脈によって使い分けられます。
Software agent との関係
software agent は、
- ユーザーや他プログラムの代理として動くソフトウェア
を指す、より広い概念です。
この中には、
- 単純な自動処理
- ルールベースのシステム
- AIを使わないプログラム
も含まれます。
そのため実務では、
「AI agent は software agent の一種として扱われることが多い」
と言えますが、学術的には agent は必ずしもソフトウェアに限定されない ため、包含関係を断言しすぎないほうが安全です。
日本語「AIエージェント」と英語のズレ
日本語では「AIエージェント」という言葉が広く使われ、
- チャットボット
- 自動化ツール
- AIアシスタント
まで含めて指されることがあります。
一方、英語圏では AI agent という語を使うと、
- 目標志向
- 行動能力
- 一定の自律性
が想定されることが多いため、翻訳や英語記事ではどの文脈の agent なのかを明確にすることが重要です。
まとめ
- AI agent:目標達成のために判断し、行動するAIシステム
- agent(学術):環境を知覚し行動する存在(非常に広義)
- AI assistant:人の指示に応じて支援する存在
- software agent:代理として動くソフトウェア全般(AIとは限らない)
以上、AIエージェントは英語でなんというのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
