Excel VBAによる機械学習の方法について

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目次

Excel VBAで機械学習を行うということ

Excelはもともと「表計算ソフト」ですが、工夫次第でシンプルな機械学習(ML)を実現できます。

特にVBA(マクロ)を活用すれば、データの読み込みから学習、予測までを自動化することも可能です。

ただし、Excelだけでは大規模データや高度なAIモデルには向きません

数千~数万件程度のデータを扱い、基礎的な分析・予測を効率化するツールとして使うのが現実的です。

Excelで機械学習を行う4つのアプローチ

ExcelでMLを実現するには、いくつかの方法があります。

それぞれの特徴を理解して選ぶことが重要です。

Excelの関数や分析ツールを活用

Excel標準の「データ分析」機能を使えば、重回帰分析などの基本的な予測モデルを構築できます。

「Solver(ソルバー)」を使えば、最適化問題としてパラメータ調整も可能です。

ただし、ロジスティック回帰などは自動機能がないため、自作関数またはVBAが必要です。

VBAでアルゴリズムを実装

VBAを使えば、学習・評価・予測を自動実行する仕組みを作れます。

代表的な例は次の3つです。

  • 重回帰分析:数値の予測(例:売上予測)
  • ロジスティック回帰:二値分類(例:購入する/しない)
  • k-meansクラスタリング:データのグループ分け(例:顧客セグメント)

この方法なら、ボタン一つでモデルの更新が可能になります。

外部ライブラリを呼び出す

VBAからC言語や統計ライブラリを呼び出して高速化する方法もありますが、設定が複雑です。

導入のハードルが高いため、初心者にはあまり向きません。

ExcelとPythonを連携させる(現実的な最適解)

Excelを入力・出力のインターフェースとして活用し、裏側でPythonが学習を行う構成です。

xlwingsPower Queryなどを使えば、Excel操作の延長線上で本格的なAI分析ができます。

現場でよく採用されている実用的な手法です。

機械学習の流れ(Excelでの実践イメージ)

Excelで機械学習を行う場合も、基本のプロセスは他のツールと同じです。

  1. データの準備と前処理
    • 欠損値を平均や中央値で補う
    • 数値の単位をそろえるために「標準化」する
    • 文字データ(カテゴリ変数)は「ワンホット化」して数値に変換
  2. データの分割
    • データを「学習用(例:80%)」と「テスト用(例:20%)」に分ける
  3. モデルの学習
    • 勾配降下法などで最適なパラメータを求める
  4. 精度の評価
    • 回帰:誤差(RMSE)や決定係数(R²)
    • 分類:正解率、適合率、再現率、F1スコア
  5. 新しいデータで予測
    • 学習したモデル(重み)を使って新しいデータを予測する
  6. 自動化
    • VBAボタンを押すだけで一連の処理を実行できるようにする

シート構成のおすすめ

Excelで機械学習を運用する際は、シートを分けて管理するのがポイントです。

シート名役割
Data元データ(特徴量と目的変数)
Config学習設定(学習率・反復回数など)
Model学習済みのパラメータ(重みや係数)
Report評価結果(RMSE・R²・混同行列など)
Predict新しいデータを入力して予測値を出す

こうしておくと、どの工程で何が行われているかが明確になり、再利用もしやすくなります。

Excelで扱いやすいアルゴリズムと活用例

アルゴリズム内容典型的な用途
重回帰分析数値の予測(線形モデル)売上やクリック率の予測
ロジスティック回帰二値分類(Yes/No)購入/非購入の分類
k-meansクラスタリング類似データのグループ化顧客セグメント分析

これらはExcelでも十分に実装可能で、業務改善に直結しやすい手法です。

マーケティングでの実例:クリック率予測

広告のクリック率(CTR)を予測したい場合を例にします。

  1. Dataシートに以下の項目を用意
    • 広告の位置(上・中・下)
    • デバイス(PC / スマホ)
    • 時間帯(sin/cos変換で24時間を周期的に表現)
    • 画像サイズや文字数
    • 実際のクリック率(目的変数)
  2. VBAで自動学習を行い、重回帰モデルを作成。
  3. ReportシートにRMSEやR²を出力して精度を確認。
  4. 新しい広告案をPredictシートに入力し、CTRを自動予測。

これにより、どんな広告設定が高い効果を出しそうかを数値でシミュレーションできます。

実装・運用時の注意点

  • 標準化は基本的に推奨
    勾配降下法を使うときや正則化を導入するときは、数値スケールを揃えないと学習が不安定になります。
  • データ規模の限界を意識する
    数十万件以上のデータでは、Excelの計算速度がボトルネックになります。
    数千~数万件程度を目安にしましょう。
  • ロジスティック回帰はSolverでは自動化されない
    Excel標準機能ではサポートされていないため、VBAまたはSolverで損失関数を定義して最適化する必要があります。
  • k-meansは初期値に依存する
    結果が安定しない場合、複数回試して最も良いクラスタを採用します。
    クラスタ数kの決定には「エルボー法」などの目安があります。
  • 分類のしきい値(0.5)は固定ではない
    業務目的に応じて、再現率やF1スコアを最大化するしきい値を調整するのが望ましいです。
  • 再現性の確保
    データ分割や乱数の初期値を固定し、前処理や標準化の平均・分散を保存して再利用します。
  • マクロの信頼設定
    社内共有時は、セキュリティ設定で「マクロを有効化」する必要があります。

さらに高度な分析を目指すなら

VBAの範囲を超える場合、次のステップとしてPython連携が最も実用的です。

  • Excelを入力・出力のUIとして使い、裏でPythonを動かす
    → これによりExcelの使いやすさを保ちつつ、
    高精度なモデル(ランダムフォレスト、XGBoost、ニューラルネットなど)を利用できます。

この構成は、業務現場とAI技術をつなぐ最も現実的な橋渡しになります。

まとめ

Excel VBAでも、次のような範囲なら十分に機械学習を実践できます。

  • 対象:数千~数万件のデータ、10~数十列程度の特徴量
  • 手法:重回帰・ロジスティック回帰・k-meansクラスタリング
  • 目的:数値予測・二値分類・セグメント分析
  • 成功の鍵:データ前処理の一貫性・評価の可視化・再現性の確保

そして、より高精度や大規模な分析を目指すなら、Excelを入口にしてPythonとの連携へステップアップするのが最も効率的です。

以上、Excel VBAによる機械学習の方法についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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