クラスタリングとグルーピングは、どちらも「複数の対象をまとめる」という点では共通していますが、分類の考え方・判断主体・目的・使われる文脈において明確な違いがあります。
特にデータ分析や情報整理の分野では、両者を混同すると誤った理解や設計につながるため、正確な区別が重要です。
以下では、それぞれの定義から実務的な使い分けまでを、体系的に整理します。
本質的な違い
両者の違いを端的に表すと、次のようになります。
- クラスタリング
→ データの特徴や類似度に基づき、アルゴリズムが自然なまとまりを見つけ出す方法 - グルーピング
→ あらかじめ定められた基準やルールに従って、人が意図的にまとめる方法
最大の違いは、「どのような基準で、誰が分類を決めているか」という点にあります。
クラスタリングとは
定義
クラスタリング(Clustering)とは、教師なし学習に分類される分析手法で、ラベル(正解カテゴリ)が与えられていないデータに対して、類似度や距離、分布構造をもとに自動的にグループを形成します。
重要なのは、「どのグループに属するか」という正解を人が与えず、データそのものが持つ構造を発見することを目的としている点です。
特徴
クラスタリングには以下のような特徴があります。
- 正解ラベルは存在しない
- 類似度の測り方(距離関数など)は設計する必要がある
- アルゴリズムやパラメータによって結果が変わる
- データに内在する構造や傾向を発見できる
完全に自動で行われるように見えますが、特徴量の選択、前処理、距離尺度、パラメータ設定は人が設計します。
主な手法
代表的なクラスタリング手法には次のようなものがあります。
| 手法 | 概要 |
|---|---|
| k-means | 指定したクラスタ数に基づき分割する |
| 階層クラスタリング | データ間の関係性を段階的に構築する |
| DBSCAN | 密度に基づきクラスタとノイズを判別 |
| GMM | 確率分布を仮定して分類する |
利用される場面
- データの探索的分析
- 構造や傾向の把握
- パターン発見
- 異常値・外れ値の検出
グルーピングとは
定義
グルーピング(Grouping)とは、事前に定義されたカテゴリ・条件・ルールに基づいて、対象を分類または集約する方法です。
分類の基準は人間が明示的に決めており、結果は常にそのルールに従います。
特徴
グルーピングには次のような特徴があります。
- 分類基準が明確で固定されている
- 結果の再現性が高い
- 説明しやすく、運用に向いている
- 業務ルールや設計思想と密接に結びつく
典型的な基準例
- 年度・月・日などの時間単位
- 地域・組織・区分コード
- 種類・カテゴリ・属性値
- 数値条件(範囲・閾値)
集約との関係
特にデータ処理の文脈では、グルーピングは「分類」だけでなく「集約」を含む概念として使われます。
例
- 地域ごとに件数を集計する
- 種類別に合計値を算出する
この場合、グルーピングはキーを指定してデータをまとめる操作を指します。
両者の違いを整理
| 観点 | クラスタリング | グルーピング |
|---|---|---|
| 分類の基準 | 類似度・距離・分布 | 事前定義ルール |
| 正解ラベル | なし | あり |
| 判断主体 | アルゴリズム(設計は人) | 人が定義 |
| 主な目的 | 構造や傾向の発見 | 整理・分類・集約 |
| 結果の安定性 | 設定に依存 | 高い |
| 説明の容易さ | 手法により差がある | 容易 |
実務上の使い分けの考え方
両者は対立する概念ではなく、役割が異なる手法です。
- クラスタリング
→ データを調べ、特徴や構造を見つけるための手段 - グルーピング
→ 発見した内容や既存ルールをもとに、整理・運用するための手段
多くの場面では、探索(クラスタリング)と整理(グルーピング)を段階的に使い分けることで、分析と運用の両立が可能になります。
注意点とよくある誤解
誤解1
「クラスタリングは分類基準がまったく存在しない」
→ 正しくは、正解ラベルが存在しないのであって、
類似度や距離の定義は事前に設計されています。
誤解2
「クラスタリングはグルーピングの自動版」
→ 両者は目的が異なり、単純な自動・手動の関係ではありません。
まとめ
- クラスタリング
→ データの内部構造を発見するための分析手法 - グルーピング
→ 人が定義した基準に基づき、分類・集約する方法
両者を正しく区別することで、分析・設計・説明の精度を大きく高めることができます。
以上、クラスタリングとグルーピングの違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
