AI(人工知能)とは何か?
AI(Artificial Intelligence/人工知能)は、「人間の知的な働きをコンピュータ上で再現・模倣する技術や研究分野の総称」です。
AIの目的は、単なる自動化ではなく「人間のように考え、学び、判断する」ことにあります。
AIは大きく次の2つの系譜に分けられます。
記号主義(ルールベースAI)
1980年代まで主流だった考え方で、「もし〜なら〜する」というルールを人間が明示的にプログラムする方法です。
例:もし 気温 > 30℃ なら エアコンをON
機械学習(Machine Learning)
ルールを手作業で書く代わりに、データから規則を自動で学ばせる手法です。
過去のデータを分析し、パターンを学習して将来を予測するモデルを構築します。
統計学や確率論を基礎に発展し、現在のAI応用の中核を担っています。
ニューラルネットワークとは?
ニューラルネットワーク(Neural Network)は、人間の脳の神経細胞(ニューロン)の働きを数学的に模倣したアルゴリズムです。
構造の基本
ニューラルネットワークは次のような層構造を持ちます。
- 入力層(Input Layer):データを受け取る層
- 隠れ層(Hidden Layers):データの特徴を抽出・変換する層
- 出力層(Output Layer):最終的な結果(分類・予測)を出す層
それぞれの層には多数の「ニューロン(ノード)」があり、各ノードは重み(weight)とバイアス(bias)を持ち、
活性化関数(activation function)を通じて非線形な変換を行います。
学習の仕組み
ニューラルネットは「誤差逆伝播法(backpropagation)」と呼ばれる手法で学習します。
- 入力データを順方向に伝達(順伝播)
- 出力と正解の差(誤差)を計算
- 誤差を逆方向に伝播させ、重みを修正
- この処理を繰り返し、精度を高めていく
これにより、ネットワークは自動的に「データの特徴」を抽出できるようになります。
AI・機械学習・ニューラルネットワーク・ディープラーニングの関係
この4つは「階層的な包含関係」にあります。
AI(人工知能)
├─ 記号主義(ルール・知識ベース)
└─ 機械学習(データ駆動型AI)
└─ ニューラルネットワーク(脳の構造を模倣)
└─ ディープラーニング(多層化+表現学習)
└─ Transformerなどの最新構造
概念 | 内容 | 代表例 |
---|---|---|
AI | 人間の知能を模倣する広い概念 | 自動運転、音声アシスタント |
機械学習 | データからルールを学ぶ手法 | スパム判定、推薦システム |
ニューラルネットワーク | 機械学習の一種で、脳を模倣 | 画像認識、音声認識 |
ディープラーニング | 多層のニューラルネットで表現学習 | ChatGPT、画像生成AI |
ディープラーニングとは何か?
ディープラーニング(Deep Learning)は、ニューラルネットワークを多層化し、特徴を自動的に学習する技術です。
以前の機械学習では「特徴量設計(feature engineering)」を人間が行っていました。
しかしディープラーニングは、生データから特徴を自動抽出する“表現学習”を可能にしました。
応用例
- 画像認識:CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
- 音声・時系列:RNN/LSTM
- 自然言語処理:Transformer(ChatGPTなどの基盤)
ChatGPTなどの生成AIとニューラルネットワーク
ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、ディープラーニングの発展形であるTransformer構造を採用しています。
学習の仕組み
- 自己教師あり学習:大量のテキストを使い、次に来る単語を予測するタスクで事前学習
- 微調整(Fine-tuning):人間の評価(RLHF)を用いて応答品質を最適化
これにより、AIは膨大な文脈情報を理解し、人間に近い自然な会話を生成できます。
AI技術の進化の歴史(3つのブーム)
時期 | 技術的背景 | 主な特徴 |
---|---|---|
第1次(1950〜60年代) | 記号主義AI(論理推論・探索) | 知能の模倣を理論的に追求 |
第2次(1980年代) | エキスパートシステム(知識工学) | 特定分野に強いが維持が困難 |
過渡期(1990〜2000年代) | 統計的機械学習(SVM・ベイズ) | 手作業の特徴設計が主流 |
第3次(2012年〜現在) | ディープラーニング(GPU+大規模データ) | 画像・音声・言語で実用化が進む |
ニューラルネットワークが得意なこと・不得意なこと
得意分野
- 画像、音声、自然言語など非構造データの解析
- 複雑なパターン認識や高次特徴の自動抽出
- 翻訳・生成・自動要約など「表現を扱う」タスク
不得意な分野(研究が進行中)
- 説明可能性(XAI):モデル内部の判断根拠が不透明
→ 近年はSHAPなどポストホック説明法の研究が進む - 常識的推論:改善しているが、ハルシネーション(誤情報生成)は未解決
- 少量データ学習/分布外一般化:依然として課題
まとめ:AIとニューラルネットワークの違いとは?
AIは「知能を作る」という目的そのもの。
ニューラルネットワークは、その目的を実現するための“手段”の一つ。
両者は「目的と技術」の関係にあり、ニューラルネットワークはAIという大きな傘の下で最も成功した方法論の一つです。
そして、ディープラーニングの登場によってAIは再び「実用段階」に入りました。
以上、ニューラルネットワークとAIの違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。