クラスタリング(clustering)とは、データにあらかじめ正解ラベルを与えずに、類似した性質を持つデータ同士をグループ(クラスタ)としてまとめる分析手法の総称です。
日本語では「クラスタ分析」「グループ化」と呼ばれることもあります。
クラスタリングの本質は、人が事前に分類基準を定義するのではなく、データそのものが持つ特徴量にもとづいて、内部構造やまとまりを見つけ出す点にあります。
この性質から、クラスタリングは一般に教師なし学習(Unsupervised Learning)に分類されます。
教師なし学習としての位置づけ(厳密な理解)
クラスタリングは「正解ラベルが存在しないデータ」を扱うことが多い手法ですが、より厳密には次のような目的で用いられます。
- ラベルに依存せず、データの潜在構造を探索したい場合
- データ集合の全体像や分布の特徴を把握したい場合
- 事前の仮定を極力置かずに、データ主導で分類を行いたい場合
また、制約条件を一部に与える半教師ありクラスタリングなど、純粋な教師なしに限らない拡張的な使い方も存在します。
クラスタリングの基本的な考え方
クラスタリングは、「互いに似ているデータは同じクラスタに属し、似ていないデータは異なるクラスタに分かれる」という考え方にもとづいています。
ここで重要なのは、「似ている」「近い」という概念は自明ではなく、数理的に定義されるという点です。
その定義次第で、同じデータであってもクラスタ構造は大きく変化します。
類似性を判断するための基準
クラスタリングでは、データ同士の関係性を評価するための基準が不可欠です。
代表的な考え方には以下があります。
距離・類似度にもとづく基準
- ユークリッド距離
- マンハッタン距離
- コサイン類似度
主に数値データやベクトルデータで用いられます。
密度にもとづく基準
- データ点が高密度で集まる領域をクラスタとみなす
- 周囲から孤立した点をノイズとして扱う
モデルにもとづく基準
- データが特定の確率モデルから生成されていると仮定し、そのモデルを推定する
クラスタリングは単一の基準に依存する手法ではなく、複数の理論的アプローチが存在する手法群である点が重要です。
代表的なクラスタリング手法
k-means(K平均法)
k-means は、最も広く知られているクラスタリング手法のひとつです。
- あらかじめクラスタ数 k を指定
- 各クラスタの中心(重心)を計算
- 各データ点を最も近い中心に割り当て
- 中心を更新し、割り当てが安定するまで反復
計算効率が高く、比較的大規模なデータにも適用できます。
一方で、以下の前提や制約があります。
- クラスタが球状であることを仮定している
- 特徴量のスケールに強く依存する
- 外れ値の影響を受けやすい
- 初期値によって結果が変わる場合がある
階層型クラスタリング
階層型クラスタリングは、データ同士の距離にもとづいてクラスタ構造を段階的に構築する手法です。
- 凝集型:近いデータ同士を順に結合していく
- 分割型:大きなクラスタから段階的に分割していく
クラスタ間の関係を樹形図として表現できるため、構造の把握に適しています。
ただし、距離行列を扱う実装が多く、データ数の増加に伴って計算量が急激に増えるという特徴があります。
DBSCAN
DBSCAN は、密度にもとづいてクラスタを形成する手法です。
- 一定の密度条件を満たす点の集合をクラスタとみなす
- 条件を満たさない点はノイズとして扱う
このため、
- クラスタ数を事前に指定する必要がない
- 非球状の複雑なクラスタ構造に対応できる
という利点があります。
一方で、
- クラスタごとに密度が大きく異なる場合に扱いづらい
- 高次元空間では距離の意味が弱くなる
といった制約も存在します。
クラスタリングと分類の違い
クラスタリングと分類は混同されやすい概念ですが、目的と前提が異なります。
- クラスタリング
- 正解ラベルを用いず、データ構造を探索する
- グループの存在や分布の特徴を把握することが目的
- 分類
- 正解ラベルを用いてモデルを学習し、未知データを判定する
- 既存のクラスへの割り当てが目的
クラスタリングは探索的分析、分類は予測的分析として位置づけられることが多いです。
クラスタリングを用いる際の注意点
- 結果は一意に定まらない
手法やパラメータ、前処理によって結果が変化する - 類似性の定義が本質的
距離や類似度の選択が結果に直接影響する - 前処理の影響が大きい
正規化、外れ値処理、特徴量設計が重要 - 解釈は人が行う必要がある
クラスタそのものに意味は自動的に付与されない
まとめ
クラスタリングとは、
データにラベルを与えず、類似性にもとづいて内部構造やまとまりを明らかにするための分析手法群
です。
分類のように正解を予測する手法とは異なり、データそのものを理解するための探索的アプローチとして用いられます。
前提条件や制約を理解したうえで適切に用いれば、クラスタリングはデータ解析において非常に有効な基礎技術となります。
以上、クラスタリングの意味についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
