強化学習と教師あり学習の違いについて

AI実装検定のご案内

機械学習には複数の学習手法がありますが、その中でも特に重要なのが教師あり学習(Supervised Learning)強化学習(Reinforcement Learning)です。

この2つはしばしば並べて語られますが、学習の目的・データの与え方・意思決定の考え方が本質的に異なります。

本記事では、表面的な違いだけでなく、実務やビジネスでの使い分けまで含めて、正確に整理します。

目次

教師あり学習とは

定義

教師あり学習とは、正解(ラベル)が付与されたデータを用いて、入力から出力を予測する関数を学習する手法です。

モデルは「この入力に対して、この出力が正しい」という対応関係を大量のデータから学び、予測誤差(損失)を最小化することを目的とします。


主なタスク

教師あり学習は、主に以下の2つに分類されます。

  • 分類(Classification)
    例:
    • メールが迷惑メールかどうか
    • 画像に写っている物体が何か
  • 回帰(Regression)
    例:
    • 売上や需要の予測
    • 価格や数値指標の推定

学習の基本的な考え方

  1. 入力データ (x) に対してモデルが予測 (y’) を出す
  2. 正解ラベル (y) との差を損失関数で計算
  3. 損失が小さくなるようにモデルのパラメータを更新
  4. これを大量のデータで繰り返す

教師あり学習は、「どれだけ正解に近づけるか」が明確なため、評価や改善が比較的行いやすいのが特徴です。

強みと注意点

強み

  • 評価指標(精度、F1、RMSEなど)が明確
  • 学習が安定しやすい
  • 実務での適用事例が非常に多い

注意点

  • ラベルの設計が難しい場合がある
  • ラベルにノイズや偏りがあると性能が劣化する
  • 過去データと将来データの分布が変わると精度が落ちる(ドメインシフト)

強化学習とは

定義

強化学習とは、正解となる行動を事前に与えず、行動の結果として得られる報酬を手がかりに、最適な行動戦略(方策)を学習する手法です。

目的は、単発の成功ではなく、将来にわたる累積報酬(期待リターン)を最大化することです。

基本構成要素

強化学習は以下の要素で構成されます。

  • 状態(State):現在の状況
  • 行動(Action):取り得る選択肢
  • 報酬(Reward):行動の評価
  • 方策(Policy):状態に応じて行動を選ぶルール

エージェントは、環境との相互作用を通じて「どの状態で、どの行動を取ると良い結果につながるか」を学習します。

学習の特徴

  • 正解行動のラベルは存在しない
  • 行動が次の状態に影響するため、データが独立にならない
  • 短期的な結果よりも、長期的な成果を重視する

ここが教師あり学習との最も大きな違いです。

強みと難しさ

強み

  • 複雑な意思決定問題に対応できる
  • 長期的な最適化が可能
  • ルールが明示できない問題にも適用できる

難しさ

  • 報酬設計が不適切だと望ましくない行動を学ぶ
  • 学習が不安定になりやすい
  • 評価や安全性の確保が難しい
  • 実環境での試行錯誤にはコストやリスクが伴う

教師あり学習と強化学習の本質的な違い

観点教師あり学習強化学習
学習の目的予測誤差の最小化累積報酬の最大化
正解データ必要(ラベル付き)不要(報酬のみ)
学習単位各データが比較的独立行動と状態が連続的に依存
意思決定直接は扱わない本質的に扱う
評価比較的容易難しいことが多い
代表的用途分類・回帰・予測制御・最適化・戦略学習

具体例で見る違い

教師あり学習の例

購入確率予測

  • 入力:ユーザー属性、閲覧履歴
  • 正解:購入したかどうか
  • 目的:購入確率を高精度に予測する

これは「過去の正解を当てる」タイプの問題です。

強化学習の例

ゲームAI

  • 状態:現在の盤面
  • 行動:次の一手
  • 報酬:勝利・敗北

どの行動が正しいかは事前に分からず、結果から学習します。

実務・ビジネスでの使い分け

教師あり学習が向くケース

  • 過去データが豊富にある
  • 正解を定義できる
  • 安定した予測が求められる

例:需要予測、CTR/CVR予測、スコアリング

強化学習が向くケース

  • 状況に応じて行動を変えたい
  • 短期成果より長期価値を重視する
  • 明確なルール化が困難

例:価格調整、在庫制御、長期LTV最適化

※なお、広告配信やレコメンドでは、短期最適化はバンディット手法、長期最適化は強化学習という形で使い分けられることが多く、必ずしも全てが強化学習とは限りません。

実務でよく使われるハイブリッド構成

現実のシステムでは、以下のような組み合わせが一般的です。

  • 教師あり学習で予測モデルを構築
  • その予測結果を用いて、ルール・探索・最適化を行う
  • 必要に応じて強化学習やバンディットを部分的に導入

単一の手法ですべてを解決するケースは稀です。

まとめ

  • 教師あり学習は「正解を見て当てる学習」
  • 強化学習は「結果の良し悪しから行動を学ぶ学習」

両者は競合するものではなく、問題の性質によって使い分け、組み合わせるものです。

この違いを正確に理解することで、AI活用やアルゴリズム設計の判断精度が大きく向上します。

以上、強化学習と教師あり学習の違いについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次